いらっしゃいませ
アルバム売上総数世界で約1億枚。観客動員数1千万人越え。
世界で最も有名なオペラ歌手ルティアーノ・パヴァロッティの生涯のドキュメンタリーです。
とても上質な、オペラを聴いたことがない、パヴァロッティの名前も知らないと言う方でもきっと最後まで観られるのではないでしょうか。かくいう私も、名前は知ってはいるが、顔がオペラの人ってメイクしているから同じようなひげ面ではっきりとこの人って判らな
い。舞台は綺麗だなと思うけど、曲も1曲全部ちゃんと聴いたこともないし、作品中の何曲かは知っているフレーズが有るなと言うレベルですが、魅入ってしまいました!
パヴァロッティはパン職人でアマチュアのテノール歌手の父とタバコ工場に勤める母の元に生まれる。父を真似て幼い頃から歌っていた彼は歌手になるより教師になれという父の教えにより一旦は教師になるが、母の「お父さんの歌には何も感じないけど、あなたの歌は心に響く」と言う言葉に後押しされ歌手になることを決意する。1961年に歌手デビューしたが、すぐに有名になったわけではなかったが、1963年のロンドン、コベントガーデンで体調不良の主演の代役に抜擢され大成功。足がかりを掴む。
パヴァロッティの凄さは出なければテノール失格と言われる「ハイC」の歌声を苦労もなく自然に出しているかのように出せること。
「この世の天国のようなハイC」を「連隊の娘」で9回も歌い上げたことで一気にオペラ界の頂点に。
彼は70年代にかけてアメリカでTVに出演したり、天性の人なつっこい笑顔と素朴な人柄でオペラの枠を超え、スターとなっていく。
しかし、順風満帆というわけには行かず、死を覚悟するような娘の難病だ。活動を休止。懸命な介護の末娘は助かるが、心ないパッシングにあい苦しむ苦しむ。
更に重責へのプレッシャーで方向を見失いそうになるパヴァロッティを救ったのはダイアナ妃だった。チャリティーコンサートで知り合ったダイアナ妃と親交を続ける内に影響され、慈善活動にかかわるようになる。新しい生きがいを見つけた彼は蘇る。
1980年代には屋外コンサートもしばしば開催し、特に3大テノール歌手(他ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ)との共演など素晴らしい活動を続ける。
90年代に入ると「パヴァロッティ&フレンズ」と企画し、ジャンルを超えたロックスターたちとの共演を、オペラ界からのパッシングを物ともせず開催。その名をオペラに留まらず、大衆にまでとどろかせる。
しかし最大の危機が訪れる。妻アドゥアトの離婚とツアーを共に回るアシスタント、ニコレッタとの再婚。23歳も年が離れている結婚に一気にイタリア中のパッシングを受け、名声は一気に地におちていく・・・
最上級の音楽ドキュメンタリーではないでしょうか。
前述のようにオペラ無知の私ですら最後まで魅入ってしまうほどですから。きっと知らないことばかり出てくるから、知識欲をかき立てられるというのは大きいと思います。
観終わった後、家ではパヴァロッティばかり聴いています。
しかしなんと言ってもパヴァロッティのひととなりなのでしょうか。
丸い身体と特上の笑顔。こういう顔に生まれると得だなぁと思わず思ってしまいました。
そして、子どものような「ありのままさ」と言えるでしょうか。
でも「ありのまま」の自由は自分にも他人にも厳しさを生みやすく、傷つきやすいものです。完璧主義者と言われ、公演キャンセルも多く、指揮者や演出家も彼の言いなりにならざるを得ない。
決して彼が「田舎のおじさん」のような人物であるばかりでないと言うことは素敵な「笑顔」の表裏であることは容易に想像できます。
そうした彼の晩年、コンサートを訪れた観客は言います。
「それほどではなかった」などと彼の衰えを語ります。
それに強烈に反論する人物がいます。
U2のボノです。「パヴァロッティ&フレンズ」での共演で友情をはぐくんでいたボノは言います。
「彼の声は挫折を重ねないと出せない声だ。それを世間が理解しないのは腹立たしい。有名な曲を歌うとき歌手は何を差し出す?
唯一差し出せる物は自分の人生だ。これまで生きてきた人生、犯した間違い、希望や欲望を全部ひっくるめて歌にぶち込む」
この言葉が、この作品の全てを語っていると言って良いでしょう。
生まれ故郷のモデナの大聖堂でのパヴァロッティの葬儀です。
10万人のファンが別れを惜しむために訪れ、出棺の際にはイタリア空軍の10機が緑、白、赤の3色の国旗を表現するという、ほとんど国葬に近い葬儀が行われました。享年71歳でした。
ローマ、カラカラ浴場での3大テノールの競演!
何という美しさ!
それではごゆっくりとお過ごしください
2019年 イギリス、アメリカ合作 115分 配給ギャガ
Staff
監督 ロン・ハワード
制作総指揮 マリオ・ジャナーニ
ロレンツォ・ミエーリ
ロレンツォ・ガンガロッサ
デビッド・ブラックマン
ティコン・ステイナー
ガイ・イースト
ニコラス・フェラル
脚本 マーク・モンロー
編集 ポール・クラウダー
Cast
ルチアーノ・パヴァロッティ
ボノ(U2)
フラシド・ドミンゴ(テノール歌手)
ホセ・カラーレス(テノール歌手)
アドォア・ヴェロー二(前妻)
ニコレッタ・マントバーニ(妻)
2020.9.13 Shichirigahama