いらっしゃいませ

 

初日に観てきました。

ハリウッド3大女優の軌跡の共演という触れ込みでの宣伝とポスターの出来は少々軽すぎるのではないでしょうか。

 

世界で最も成功したケーブルTV「FOX」の人気キャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)はFOXのCEOロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラで提訴する。人気キャスターとTV界の帝王とのスキャンダルに世間は驚く。FOX内部では女性達がエイルズのセクハラの被害者であるにもかかわらず、その報酬の大きさやそれぞれの思惑により、必ずしもグレッチェンの味方にという方向には行かず、「チーム・エイルズ」などエイルズを支持する運動さえ起こってしまう。

そんな中、FOXの看板番組のメインキャスター、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は心を揺るがせる。自らもセクハラの被害に遭いながらもそれをしのぎ、局内でのし上がった経緯があるからだ。しかし、今の彼女は大統領選挙でヒラリー・クリントンとしのぎを削るトランプの女性蔑視を糾弾する運動を起こしている身。

一方、新人で野心あふれメインを目指すケイラ(マーゴット・ロビー)はエイルズに正にリアルタイムでセクハラに遭っていたのだ・・・  

 

保守とリベラルがせめぎ合う組織。企業風土。セクハラなどという言葉など存在せず、家父長制時代に生まれたCEOとそれに甘んじようとしない教養も行動力もある女性キャスター。

亦それに反発する保身や生活に縛られる現状維持派。

超が付く自己承認要求の強い女性キャスター達の向上心と競争心と傲慢さ。

そういったものが恐ろしく絡み合い、スリリングにテンポ良く進みます。実際のニュース映像やトランプ大統領の映像が緊迫感を生み出してくれます。

 

シャーリーズセロンをはじめとする出演者が素晴らしいですね。

特に女性陣。3大女優は見事に3世代のというか、それぞれの思いを演じきっていると思います。

宣伝用ポスターの3人を観ると、まるで三人が一丸となって強大な壁CEOエイルズに立ち向かっているようですが、実際はまるで違う。それぞれの勝ち抜いていこうという気持ちや勝ち抜いてきたというプライド、何を持ってキャスターたり得るのかという誇り。

そして本来は全く仲良しクラブになり得ない3人。

その緊張感が溜りません。

最年長を演じるニコール・キッドマンの不本意なポジションでの憤懣と少しの諦め、そして私はやれるという自負。シャーリーズ・セロンの油の乗りきったまさに圧倒されるような自信あふれる姿と心の奥の微かなさざ波の表現。マーゴット・ロビーの若さ故の傲慢さと脆さの紙一重の危うさ。どの演技も格の違いを見せつけます。

 

エイルズのジョン・リスゴーも良いですね。

女は男の「物」でしかないというような態度。老練な彼はもはや表情を変えることなくセクハラを行います。

セクハラなどという言葉がない時代を生きてきた彼には、TV業界という世界にいる以上「今」それが悪いとされていることを認識していても、ギブアンドテイクで与える物は与えてきたという感覚が強すぎ罪悪感はないに等しいでしょう。

単なる老いぼれへの転落を好演しています。

 

 

グレッチェンはCEOを訴えることにより、メーガンはトランプの女性蔑視発言を糾弾することにより、巨大な組織と対立し、身の危険を感じるほどの攻撃を受けます。

 

この物語で辛いのは数人の応援をしてくれる人はいても、結局戦いは一人であると言うことが見えてしまうことでしょう。

恐らくは同じ目に遭っている女性ですら、現在のしがらみ(家族、地位、収入など)やセクハラを気にしない(それよりも恩義が強い)、密室でのことが多いセクハラを公にしたくないと尻込みしてしまう。または、成功者に対する妬みなどで「敵」になってしまうことが露わになってしまうことです。

 

「覚悟」が試されている物語です。

 

しかし、これで世の中が変わったと言えない、そういうことがあったというだけで、何も「まだ」変わっていないという物語だと思います。

ただ、出発点になったかも知れない物語です。

 

 

それにしてもシャーリズ・セロンのメーガンは美しい!

アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞のカズ・ヒロさん素晴らしすぎます!

 

それではごゆっくりお過ごしください

 

2019年アメリカ・カナダ合作 109分 配給ギャガ

Staff

監督 ジェイ・ローチ

脚本 チャールズ・ランドルフ

制作 アーロン・L・ギルバート

    ロバート・グラフ

    ミシェル・グラフ

    チャールズ・ランドルフ

    マーガレット・ライリー

    シャーリーズ・セロン

    ベス・コノン

    A・J・ディックス

制作総指揮 ミーガン・エリソン

         ジェイソン・クロス

         リチャード・マコーネル

撮影 バリー・アクロイド

美術 マーク・リッカー

衣装 コリーン・アトウッド

編集 ジョン・ポール

音楽 セオドラ・シャビロ

音楽監修 エブイエン・グリーン

特殊メイク カズ・ヒロ

 

Cast

メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)

グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)

ケイラ・ポスビシル(マーゴット・ロビー)

ロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)

ジェス・カー(ケイト・マッキノン)

ベス・エイルズ(コニー・ブリットン)

マルコム・マクダウェル(ルパート・マードック)

スーザン・エストリッチ(アリソン・ジャネイ)

リリー(リブ・ヒューソン)

ジュリア(ブリジッド・ランディーペイ)

ギル(ロブ・ディレイニー)

ダグ(マーク・デュプラス)

  

 

2020/2/23 Shichirigahama