いらっしゃいませ

 

今日は、学生時代にお金がなくて、財布が買えず、とりあえず手近にあったダンボールを使って財布を作った。それがきっかけでダンボールをダンボールでなくしてしまった人のとてもハートウォーミングで、ちょこっとホロッとさせる素敵なドキュメンタリーです。

島津さんは多摩美術大学をでたあと、大手広告代理店に就職します。

しかし過ぎた「ダンボール愛」は勤務中も優先順位はダンボール。退社します。

彼は海外にまでダンボール漁りの旅をして、その国々の事情を反映しているダンボールにどんどん惹かれていきます。

彼は財布、定期入れ、名刺入れなどを各地で集めたダンボールを使って作ることに集中するようになる。

それは島津さんの生業となり、ポップアップショップでの販売

ワークショップを開催し、ダンボールの魅力、ゴミを価値のある物に変える魅力を拡散。

日本のみならず海外までのダンボール収集。

ダンボールの伝道師。

島津さんのダンボール愛を笑う人はいません。

もしかすると、人がどう思うかとか考えず、思いを伝える姿は滑稽に見えることもあるかも知れません。

しかし、ひとつのことを突き詰めるとはこういうことなのかと、感嘆するに違いありません。

島津さんの話を聞いた人は、ルーティーンでやってきた自分の仕事を、知らないところで、こんなに見てくれている人がいることを知り、誇りに思ったのではないでしょうか。

ある日彼はとてもかわいいポテトの箱を見つけます。

緑とも黄色とも言える微妙な色の箱。「徳之島」と書かれ、通常のフォントではないデザインされた文字。

そしてなんともかわいいゆるキャラ。3匹もいる。

 

彼は思っていた。ダンボールには物語があると。この箱はどこで、どうして生まれたのか。

「ダンボール里帰りプロジェクト」

 

彼は箱に書かれていた長崎の集積場に行きます。

そこで彼は箱の工場が熊本にあることを教えてもらい、熊本で工場の方々にデザインした方のお宅に伺います。

彼は箱のデザインが生まれた経緯を尋ねます。

そこで得られた物は・・・

 

島津さんはお二人にポテトの箱で作った財布をプレゼントします。

「ダンボールのお里帰り」です。

お二人に手渡された財布はもはやダンボール製のお金を入れる道具ではありませんでした。人生を見つめ直させる「なにか」になったのでした。

それはきっと、島津さんも予想だにしなかった変化だったに違いありません。

「ごみ」に成ってしまうダンボールは人と切れてしまいます。でも島津さんに拾われたダンボールは、別の命を吹き込まれて別物に生まれ変わったのです。

まるで、ダンボールであったことを忘れたかのように。

 

とても素敵なドキュメンタリーでした。

気になったと言えば、島津さんの行動だけでもほっこりするのに

作為的に猫のくつろぐ姿のカットが2度入るところでしょうか。

無理に演出する必要があるのかなと思いました。

しかし、とても魅力的な作品で、これからの時代の若い方々には是非観てもらいたいと思いました。もしかしたら、今の時代の無駄使いを精算することになるかも知れない若い世代に。

 

「アップサイクル」へ

 

 

 

島津さんの、自由闊達な発想に対し、少し心配になったことがあります。湖畔でしょうか。イベントでワークショップを開催しています。

「NORTH FACE(ノースフェイス)」の靴の空き箱を使って財布を作るというワークショップです。。展開した靴の箱にテンプレートをあてて切り出し、財布を作るというワークショップです。

靴の空き箱というそれほど大きくない箱にテンプレートのサイズという制約があったと思いますが。

サンプリングされた全員が、「NORTH FACE」のロゴマーク

が、財布の表側にきれいに収まるように作っていたことです。

誰一人として、半分欠けていたり、裏から回してきたりが無いのです。

皆、発想が同じなのです。

これは日本の教育のせいなのでしょうか。

私には少し怖く感じました。

 

 

それではどうぞ、ごゆっくりお過ごしください

 

2018年 日本 91分 配給 ピクチャーズデプト

 

監督 岡島龍介

プロデューサー 汐巻裕子

撮影 岡島龍介、サム・K・ヤノ

編集 岡島龍介

音楽 吉田大致

VFX 松元遼

 

Cast

島津冬樹

マイケル・ギダ(ナレーション)

 

          2019/01/18   Shichirigahama