疑問符の4: ベント | 夢破窓在のブログ

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 疑問符の4: ベント

「首相の見学によりベントが遅れて事態が悪化した。」
「ベントを11日夜までに行なっていれば事態の悪化は避けられた」
などと言う人がいます。
何が避けられたというのでしょうか?

ベントは圧力が高まった格納容器の圧力を下げるために行なわれるものです。
「メルトダウン」などと騒がれているのは圧力容器の内部の話です。
外側の、圧力がずっと低い格納容器の圧力が下がったとして圧力容器にどのような影響を及ぼす事が出来たと言うのでしょう。

ベントをせずにそのまま放置するとどうなるのでしょうか?格納容器が破壊される?
そんな事にはなりませんが、格納容器より圧力に弱い、圧力抑制プールがパンクした可能性があります。(注1)
でも1号機では圧力抑制プールのパンクは起きていません。
11日中に行なわれようが、見学に来る人がいて開放を遅らせることになろうが、圧力抑制プールがパンクしていないのなら、圧力がいかばかりか上昇しただけで、早いか、遅いかは関係ないと思います。

ベントで登場するのは水酸化セシウムが親和した蒸気です。
格納容器の圧力の限度は約5気圧で、ベントをする時には極限近くに高まっていたそうです。これが1気圧まで下がるのだとしたら、煙突から出て行こうが、パンクした穴から出て行こうが排出量は大して変わらないと思います。

放射性物質を含んだ気体の場合、ベントは煙突から放出するのではなく建屋内に放出するべきです。
一気に放出するのではなくパンクをしない範囲で、流量を絞って放出するべきです。
冷やされた蒸気は建屋内で凝固して液化します。
水酸化セシウムは水分に親和して滲んで行きますから外部に漏れるのは避けられませんが、煙突から放出するより建屋内で液化している分だけ外部への影響はずっと少なくなる筈です。

ベント、ベント、ベントを急げと騒いでいた人がいたようです。
煙突から放射性物質を吐き出したくて仕方が無かったようです。
その後で、「汚染」した、史上最悪の事故だ、「メルトダウン」が起きているぞ!
そんなのベントする前に感知できていた筈です。
そんな気体を煙突から吐き出すなんてトンでもない話だったのです。

どうやら彼らは水酸化セシウムという物質の性質を知らなかったようです。
ベントをすれば出てゆくのは蒸気だけ、そして格納容器(圧力抑制プール)の破壊が免れると考えていたようです。
お馬鹿さん。

それでも、もっとお馬鹿さんがいます。
ベントでストロンチウムやプルトニウムが空を飛んで行ったというのです。
3月の福島の寒空をどうやって飛ぶのか?考えもしないで、説明もしないで発言する人がいるのです。

(注1)
圧力抑制プールは格納容器の一部でこれを含めて格納容器だ、と言う人がいますが、MARKⅠと呼ばれる今回問題を起こした原子炉は、見れば判るとおり圧力抑制プールと格納容器は別々です。これを一つのものと言うのは無理があります。付属物と見なすべきです。これより後に作られた圧力抑制プール一体型の原子炉とは違うのですから。