インフレ・ターゲットについて | 幸福実現党・学生部

幸福実現党・学生部

幸福実現党の学生有志により運営されているブログです。

HRPの主要政策のまず一番上に出てくるのがインフレ・ターゲット。でもこのインフレターゲットについて、あまりHRPから詳しい説明があるように思えない。なので、前回の日記に続いて、インフレって何?というところから、なるべくわかりやすく、元祖インタゲ論のクルーグマンの主張も解説しつつ、詳しく説明していきたい。


「インフレを起こす」ということを聞いただけで、拒否反応を起こす人もいる。僕らのお祖父さん世代は特にそうかもしれない。


それはわからないでもない。彼らは戦中戦後の大インフレや70年代の大インフレを経験しているから。また世界経済を見てみると、発展途上国など政情が不安定な地域はだいたいインフレと格闘している。だから「インフレ」と聞くと直感的に拒否反応を示してしまう。その国の経済がインフレに「陥っている」というのは、その国が世界から信用されていないということを示す「場合もある」からだ。


インフレという言葉を辞書で引くとたぶん、一般的な物価水準が継続的に上昇することと書いてあると思う。要するに物の値段が上がるってこと。でもここで「一般的」という言葉に注意が必要で、個別の価格、例えばガソリン価格や農産物価格が高騰しても国内のあらゆる財・サービスの物価水準が上がるとは限らなくて、そういう全部の値段があがっていくことをインフレという。インフレの説明はそんなところ。


ではインフレは経済にとって本当に問題なのだろうか。


物の値段が上がると、僕たち庶民の生活が苦しくなるかもしれない。でもよく考えてみれば、物価には経営者が従業員に払う「お給料」も含まれている。経営者は従業員の労働力という「サービス」を買っているわけだから。すると物価が上昇するってことは、「お給料」も上がるってことになる。


インフレは、物の値段が高くなって、お給料も高くなることだから、僕たち庶民にとっても何も問題はない。何も問題ではないどころか、企業や国家にとってはむしろプラスになる(それを通じて庶民にとってもプラスになる)。もちろんハイパー・インフレとかハイ・インフレと言われるような状態になると問題が出てくる。それについては後で、時間があったら書いておこうと思う。直感的にわかることだと思うけれど。


ところで景気が良いというのは、どのような状態のことだろうか。それは簡単。商売をやっていて物が良く売れる状態のことだ。「売り切れ御免」でサービスの供給が間に合わないくらいに売れ行きが良い状態、これが特別なお店だけでなく、平均的にどこのお店でも売れ行きが良い状態、これが景気が良い状態だ。


では売れ行きが良くなったら、お店はどうするだろうか。これも簡単。商品の値段を上げてより大きな儲けを得ようとする。そして平均的にどこのお店も景気が良ければ、全ての財やサービスの価格が上がっていく、つまりインフレになっていくというわけだ。


だから景気が良いというのは、インフレだということ。つまりインフレは本当は良いことだ。


しかしここである疑問が出てくる。「インフレを起こせ」というのは「景気を良くしろ」と同じことを言っているだけではないかと。むしろ景気が良くなるから、インフレになるのであって、インフレになるから景気が良くなるのではないと主張する人もいる。要するにインフレと景気というのは、鶏と卵の問題と同じだと。


結構前の日記に書いた「リアル・ビルズ・ドクトリン」をめちゃくちゃ単純化して、かつ直感的に表現すると上のような議論になる。このようなインフレと景気は鶏と卵で、インフレを起こして景気を良くすることはできないという話しは、実は歴史上何度となく出てきて、現代に生き残った「経済学」はこれを否定し続けてきた。ちなみに現代では「学派にかかわらず」一致して経済学はリアル・ビルズ・ドクトリンを否定している。


インフレというのは、一般的な価格水準が上昇していくことだから、その反面でお金の価値が下落している状態のことだ。


ところで経済学の基本的な話しによれば、物の価値というのは需要と供給の関係で決まる。つまり、たくさんの人が欲しがっているのに、その数が少ないようなもの、例えばダイヤモンドには高い値段が付けられる。他方で必要とはされているけれど、たくさん生産されているようなものの値段は低くなる。


貨幣もこの原則の中にあるとすれば、政府がたくさん貨幣を刷れば(貨幣の供給が増大すれば)貨幣の価値は下がってインフレになる。


昔からの経済学やフリードマンによって復活した貨幣数量説(マネタリズム)の立場に立つ人たちは、このような仮定をもとに議論をする。つまり、インフレにしたいんだったら貨幣を刷ればいいと。貨幣を刷ればインフレになって万事解決だと。


しかし、2000年代の日本政府は確かに貨幣を刷ってきた。少なくとも貨幣を刷ることはあっても(買いオペ)、貨幣を巻き上げること(売りオペ)はなかった。だから2000年代を通じて、円の量は増えている。


しかし、日本はインフレになっていない。それどころか、いまだデフレである。そういうところから、貨幣は供給が増えたからといってその価値が下落していく(インフレになる)ようなものじゃないんじゃないかと主張する人がいる(日銀マンや大前研一など)。だから貨幣を刷っても意味がないと主張する。


そんなおりに現れたのが、前回の日記で出てきたポール・クルーグマンだ。

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)/ポール クルーグマン
¥1,365
Amazon.co.jp


98年、このクルーグマンという髭の親父が元祖インフレ・ターゲット論者として、日本もインタゲを導入すべきだと提言してきた。どちらかというと有名なのは「It's Baaack!」と題された(邦訳「復活だぁ!」)論文が収録されているこの本だ。

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門/ポール・クルーグマン
¥1,680
Amazon.co.jp


タイトルからしてもわかるとおり、クルーグマン教授はくだけている。そしてクルーグマンも従来型の金融政策、つまり金利を下げて貨幣を刷る政策はインポ(笑)になっている(経済学では流動性の罠という)と述べている。


クルーグマンによれば、単に中央銀行が貨幣を刷っても現代の日本はデフレを脱却できないのだそうだ。むしろ今のような金利が限りなく0に近いような状態だと、お金を銀行に預けてもしょうがないから、みんなが預金を引き出してタンスにしまってしまうと。お金を刷れば刷るほどさまざまな金利は下がっていくから、お金を運用する意味がなくなっていって、だったら余計にタンスにしまっておけばいいやという状態になってしまうのだ。(信用収縮)


しかし、クルーグマンは従来型の金融政策を否定しながらも、この状態を脱するためにはやはり金融政策が必要であると結論付ける。


クルーグマンによれば、金融政策に目的・目標を持たせなければ意味がないのだ。それが「マイナスの実質金利を与えてやれ」というものだ。


金利がマイナスというのはどういう状態だろうか。普通はお金を借りたら、貸してくれた人(金融機関)に利子を支払わなければならない。金利がマイナスということは、お金を借りておきながらさらに利子までもらえるという状態だ。


そんなことありえんの?という話しだが、人々のインフレ期待を盛り上げることができればできる。


もう一度、インフレって何ということを考えると、インフレは継続的な物価上昇のこと。これは企業や国、あるいは個人の借金が小さくなっていくということも意味する。例えば企業が新しいプロジェクトを企画して、そのために100万円銀行から借りたとする。インフレだと、貨幣価値が下落していくから、今日の100万円は明日には100万円以下の価値になっている。だから100万円借金しても例えば年率5%のインフレであれば、翌年には借金は95万円分の価値に下落している。これがマイナスの実質金利ということ。


逆にデフレだと、借金の実質の価値は年々大きくなっていってしまう。だから企業は投資を控え、個人も消費を控えていってしまう。これが現在の日本の不況の原因だ。


ではどうしたらインフレに出来るか。その答えは、インフレになるまで貨幣を刷ること。


ちょびちょび貨幣を刷っても、政府にインフレを起こすという意思がなければ、人々は貨幣を貯蔵していしまい、デフレを脱却できない。


「インフレになるまで、貨幣を刷ります。だからみなさんインフレになると信じてください。今日100万円借金しても、来年その借金はほっておいても小さくなっています。だからみなさんお金を使いましょう!」と言ってインフレになることを国民に「信じ込ませる」必要がある。政策が継続的に行われるという「信頼性」が大問題なんだ。


そのために政府は政府でちょびちょび金融緩和しては緊縮してを繰り返すのではなく、ちゃんと目標を設定してインフレが起こるまで貨幣を刷り続ける必要がある。


貨幣を刷り続けてインフレにならないなんてことは絶対にありえない。もし円を刷り続けてインフレにならないのだとしたら、刷った貨幣で国と地方の借金1000兆円を支払ってしまうこともできるし、銀行と言わずあらゆる企業や個人の借金を帳消しにできる。それどころか世界中の富を円で一手にできる。それでもインフレにならないなら、それはそれでいいかもしれない。でも絶対にそんなことはありえない。絶対どこかでインフレになっている。インフレになるまで貨幣を刷り続ければ。そしてこれからインフレになるという期待が国民の間に湧き上がれば、マイナスの実質金利が実現する。これで景気が回復するはず。


上のピンクの本には、ラルフ・スヴェンソンという当時プリンストン大学の教授で現在スウェーデンの中央銀行総裁をやっている人の「こうすれば絶対インフレにできる」という提言まで載っている。


ちなみに同じく元プリンストンで現在FRB総裁のベン・バーナンキは物価上昇率目標(これがインタゲの日本語)ではなく、物価目標の設定を提言している。こっちはもしも90年代日本がデフレを経験せず2%程度のマイルド・インフレで物価が推移していきたらという値を目指して、物価を一気に上昇させよという提案。図で示すと、、、、。こっちの方より強力。


要はちゃんと目標を設定して、インフレを起こしていきましょうというが、このインフレ・ターゲットという政策というわけです。



川辺賢一