覚悟
中学校の体育館裏に少年はいた。
首からタオルをかけ、
スポーツドリンクを飲んだ後、
「ちっ」
と何やら苛立っているようすだった。
じじいはそんな少年を見つけて、話しかけた。
「嫌なことでもあったのか?」
少年は答える。
「何でもね~よ。っていうか誰だよ!」
じじいは笑って言った。
「変なお爺さんじゃ!
こう見えて、人の心が読み取れる特技をもっておるぞ」
「あっそ~、じゃあ聴くけど、俺はキャプテンなのに、
何でチームメイトは俺の言うことを聞かないんだ」
じじいは少年の目をじ~っと見つめ、
ゆっくりと口を開いた。
「その格好を見る限りバスケ部じゃな、一つ質問するが、
お主に覚悟はあるかい?」
「覚悟?覚悟って、何の覚悟だよ?」
「自分が犠牲になってでも成し遂げる覚悟じゃよ!
リードされている時、誰よりも声を出す覚悟!
チームの足が止まってきた時、誰よりも動く覚悟!
勝ったときに仲間を褒め称えるとか、
負けたときには自分の責任にするとか、
そうやってチームメイトを守る覚悟があるのか?と聴いているんじゃ!
その逆を想像してみなさい」
幾らか時間をおいて少年が言った。
「お、おれ、仲間のせいにしてた・・・おれだけ頑張っていると思ってた・・・」
じじいはまた優しい顔に戻って言った。
「そう、それが今のお主じゃ。それが分かったら話は早い。覚悟を決めるんじゃぞ!」
「おしっ!覚悟、決めてみる!じいさんありがとう」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、礼はいいからそのジュースくれ」
「何だよじいさん、学生にたかるなよ!」
「何を言うか!これは相談料じゃ!格安じゃわい」
そう言ってジュースを持って行ってしまったとさ・・・