「ダイヤモンドの特徴は?」と聞かれると、誰でも「ダイヤモンドは硬い」と答えるでしょう。モース硬度計でもダイヤモンドが一番硬いとされ、それが常識とされてきました。
でも、本当にダイヤモンドより硬いものはないのでしょうか?今回は、この当たり前の常識を疑ってみるお話です。
そして、もしかしたら夫が遺骨ダイヤモンドよりも「骨のまま置いておけば」と言っているのは、その「硬さ」とは別の、節約志向から来ているのかもしれない…そんな話にも繋がっていくかもしれません。
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ダイヤモンドより硬いものはあるの?
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どうしてダイヤモンドは硬いのか?
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ダイヤモンドは割れやすいって本当?
ダイヤモンドより硬いものが存在した!?
「ダイヤモンドより硬いもの」とインターネットで検索してみると、驚きの事実が!
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ウルツァイト窒化ホウ素はダイヤモンドの1.18倍
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ロンズデーライトはダイヤモンドの1.58倍
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カルビンはダイヤモンドの3倍
もの硬さがあるという情報が出てきました(!)。
硬さの単位「モース硬度」とは
硬さの単位にはモース硬度があります。これはドイツの鉱物学者モースが提唱した尺度で、物質の傷つきやすさで硬さを判定します。柔らかいものはすぐに傷がつき、硬いものは傷がつきにくいので、2つの物質でどちらが傷つきやすいかを比べれば、硬さを比較できるというわけです。
モース硬度では、硬度1が最も柔らかく、硬度10が最も硬いとされてきましたが、この硬度10こそがダイヤモンドだったのです。
ハイパーダイヤモンドの登場
そして、ダイヤモンドのナノロッド凝集体である「ハイパーダイヤモンド」も、従来のダイヤモンドよりも硬い物質だと言われています。
ハイパーダイヤモンドは、フラーレン(炭素の同素体:炭素だけの組み合わせで出来上がった結晶)を原材料にした人工のダイヤモンドで、その破壊靭性(壊れにくさ)と摩耗抵抗(擦り減りにくさ)がダイヤモンドの3倍もあるそうです。
なぜダイヤモンドは硬いのか?
ダイヤモンドがこれほど硬いのは、その炭素の強い配列(共有結合)に由来します。共有結合はイオン結合よりも一般的に強い力で結びついています。このように、炭素が異なる結びつき方でできた物質を同素体(炭素だけの組み合わせで出来上がった結晶のこと)というのですが、実は、この炭素の共有結合よりも硬い物質があったのです。
ウルツァイト窒化ホウ素の驚異
それが、ウルツァイト窒化ホウ素です。この物質はダイヤモンドより1.18倍硬いと言われています。
火山活動で見つかった天然物で、ダイヤモンドの基本構造に窒素やホウ素が内包されるような結晶構造をしています(ちなみに、ダイヤモンドが黄色になるのは窒素、青色になるのはホウ素が含まれているためです)。高温の酸素の中でも燃えにくいため、高温になるドリルの先端やロケット表面などに使用されています。
隕石が生んだ最強のダイヤモンド「ロンズデーライト」
さらに硬いのがロンズデーライト。ダイヤモンドより1.58倍硬いとされています。
六方晶(ろっぽうしょう)系の結晶構造を持つ炭素の同素体で、「六方晶ダイヤモンド」とも呼ばれています。鉱物・結晶学者のキャスリーン・ロンズデールにちなんで名付けられました。
これは、隕石が地球に衝突した際の高い熱と強い圧力によって炭素が結晶化して作られるもので、地球内部で作られるダイヤモンドよりも数倍強いエネルギーが関わっています。
その証拠に、アメリカ・アリゾナ州にあるバリンジャー・クレーターを作った隕石から、1967年に初めて発見されました。その後も、ニューメキシコのケナ隕石、ロシアのツングースカ、南極大陸の隕石からも微細なダイヤモンドと一緒にロンズデーライトが見つかっています。
人工的に作ることも可能で、高圧プレスや爆薬によって炭素がロンズデーライトに変化することもあります(ごく微量ですが)。
しかし、さらに驚くべきことに、このロンズデーライトよりもさらに硬い物質があったのです。
地球上で最も硬い物質「カルビン」
カルビンもダイヤモンドと同じ炭素の同素体(炭素にはグラファイト(黒鉛)、フラーレン、ダイヤモンド、カルビンといった同素体があります)で、なんとダイヤモンドの3倍の硬さを持ちます。2013年10月9日に、地球上で最も硬い物質と発表がありました。
カルビンの見た目は黒鉛のような黒色です。先ほどご紹介した「ハイパーダイヤモンド」の一つが、このカルビンを指していることもあります。
炭素の同素体と硬さの関係
炭素の同素体には、
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黒鉛(グラファイト)
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ダイヤモンド
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フラーレン
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ロンズデーライト
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カルビン
などがあります。こうして見ると、炭素の同素体は、ほんの少しの原子の配列の違いで、これほどまでに硬さが異なる物質が形成されることがわかります。
ちなみに、鉄に炭素を混ぜた「炭素鋼」というものも硬い鉄で、刃物の先端などに使用されています。炭素は身近に存在しながら、物質の硬さの主要な原因となる元素なのかもしれませんね。
ダイヤモンドは本当に「割れやすい」のか?
世界一硬いと言われ続けてきたダイヤモンドなので、「ダイヤモンドは割れない」と思われがちですが、実際にはカッターナイフで割ることができます(※注意:私は怖くて確かめる気はありません)。
先にも述べた通り、モース硬度は「引っかいて傷がつくか」を調べた硬さです。硬いものほど割れやすいという性質は、ガラスや陶磁器の食器で皆さんも経験があるかと思います。ダイヤモンドも叩いたら割れると思います(※再度注意:私は怖くて確かめていません)。
ダイヤモンドは衝撃に弱い
ダイヤモンドは、ハンマーで叩けば粉々になります(※再々注意:私は怖くて確かめていません)。
ダイヤモンドには「剥がれやすい角度」がある
ダイヤモンドの炭素原子の配列には、原子同士の結合力が弱い部分があり、その部分に沿って割れる性質を**へき開(へきかい)**と言います。へき開によって割れた面は比較的平滑になりますが、その面をへき開面と呼びます。
ダイヤモンドをカットする際も、このへき開の性質を利用しています。ラウンドブリリアントカットなど、ダイヤモンドのへき開面に沿わない面は、研磨によってカットされています。
ダイヤモンドを身に着けるときの注意点
ダイヤモンドは硬いからといって、決して安心しないでください。このような注意が必要です。
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どこかにぶつけないように注意する
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気づいたらダイヤモンドが割れていた
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傷がついていた・欠けていた
割れや欠けは、実はよくあることです。大切に身に着けるためにも、注意しましょう。
まとめ|夫が遺骨ダイヤモンドを渋る理由と「硬さ」の真実
ダイヤモンドの特徴は、誰でも知っている「硬い」こと。しかし、実はダイヤモンドより硬い物質が存在します。それは、ウルツァイト窒化ホウ素(1.18倍)、ロンズデーライト(1.58倍)、そしてカルビン(3倍)でした。
また、いくら硬いダイヤモンドといえども、へき開性(へきかいせい)という割れやすい性質も持っています。そのため、身に着けて持ち歩く際には注意が必要です。
もしかしたら、夫が遺骨ダイヤモンドよりも「骨のまま置いておけば」と言っているのは、この**「割れやすさ」というリスク**、あるいは単純に節約志向から来ているのかもしれませんね。
ダイヤモンドの真の姿を知ることで、遺骨ダイヤモンドを検討する際の新たな視点が見つかるかもしれません。