今年一番の出会いはまちがいなく森シメさん、だ。
有吉佐和子『青い壺』がなぜ今頃ベストセラー入りしたのか気になっていたのだけれど、本代をケチる日々ゆえ躊躇した挙げ句購入。
思えば女流作家と言えば、17,8の頃熱中した岡本かの子の他は円地文子、芝木好子くらい。ごく最近は井上荒野さんを読んだ。
『青い壺』は昭和50年代頃の高齢女性の今となっては幸せな老後を描いたもの。元外交官夫人や会社社長の母堂の優雅な老後から、独身の娘と同居して眼の手術により光の世界を取り戻した幸運な女性など6人の女性をつなぐアイテムが、京都在の陶芸家による青磁の逸品なのだ。
当時は三世代同居がまだ健在で、なにしろ家内には専業主婦というものが当たり前にいた時代なのである。これが味噌。
森シメさんは唯一働く高齢女性(といっても61歳)。今は息子一家と3DKで上手に暮らしていて家計に貢献もしている。手狭だが内風呂があることにシメさんは満足しているし、嫁さんも孫もばあちゃんを大切にしているのが感じられる。
シメさんが働けなくなっても、息子夫婦はなんとか面倒を見てくれるだろう、と思える社会、時代。
私はシメさんの年をはるかに超えてまだ生きている。友人たちはほぼ同年齢で今の所ガンにもならず日常生活を送れているが、もはや『青い壺』の時代のように、安心して或いは淡々とお迎えを待つ心境にはない。
子のある人もない人も、ただ子や周囲にかかる迷惑をいかに最小化するか、に腐心している。
それは『終活』と呼ばれる高齢者の努力義務で、もー面倒ったらない。もー死んじゃいたいくらい面倒。