(7月9日付 編集手帳より)


自分より未熟なものに教えられることもある、という意味で〈負うた子に道を教えられる〉という言葉がある。
「なぜ、大タコが道を…?」と大学の先生に質問する学生がいたと、俳人の楠本憲吉さんが語っていたという。

確かに、文字を見ずに音だけで「オウタコニミチヲ」と言われれば、「大タコに道を」だと思いそうだ。


ドイツの水族館にいるタコの「パウル君」が、国旗を付けた二つの容器のうち、どちらの餌を選ぶかという方法で、W杯南アフリカ大会のドイツの6試合すべての勝敗を的中させたという。日本の報道でもたびたび採り上げられた。


タコで占うというのは、およそ日本では想像しにくい。動物を使うとしても、せいぜいイヌかネコ止まりだと思う。

このパウル君、準決勝・対スペイン戦での敗退も見事に当ててしまったため、ドイツでは「サメが入った水槽に送れ」「パエリアにしろ」などと、八つ当たりの非難を一身に浴びているという。


「パエリアにしろ」って(笑)
アハハ。

食べ物を用いて占いにすることの受難か。


我々なら、
「たこ焼きにしろ」ってな感じだろうか。


本来、占いをしたパウル君には何の責任もない。未来を占っただけなのだから。でも、落胆と無念のやり場をそこに持って行くしかないドイツ国民の気持ちも理解できないではない。「お前が負けると予想したから負けたじゃないか」

ただ、論理が破綻している主張であることは確かである。予想したから負けたのではなく、負けることを予想したに過ぎないのだ。予想を外した予想屋に対して怒りをぶつけるなら、理に適っている。

そういう意味では、競馬予想家は一年のうちに何回怒りをぶつけられなければならないのだろう。ふと、そんなことを思った。ちなみに私のように予想を外しまくってしまう人間は、いかに競馬が好きでもとてもそんな職業につくことはできない。外を歩くだけで石でも投げつけられるのではないか、とビクビクして日々を過ごすことになりそうだから。