『シロクマはハワイで生きる必要はない』というのは、私がこの本を執筆(西の魔女が死んだ)していた当時、人間関係にがんじがらめになった子どもたちと分かち合いたい言葉だった。
もう、だめだ、と思ったら逃げること。
そして「自分の好きな場所」を探す。
ちょっとがんばれば、そこが自分の好きな場所になりそう、というときは、骨身を惜しまず努力する。
逃げるのは恥ではない。
津波が襲って来るとき、全力を尽くして逃げたからと言って、誰がそれを卑怯とののしるだろうか。
逃げ足の速さは生きる力である。
津波の大きさを直感するのも、生きる本能の強さである。
いつか自分の全力を出して立ち向かえる津波の大きさが、正しくつかめるときが来るだろう。
そのときは、逃げない。
『不思議な羅針盤』より。
梨木香歩さん。☆