字の読めない女。 | シン・135℃な裏庭。

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もう、10年たつから一昔前っていうのかな?


とある営業のお仕事をしていたんです。


そこである女性と出会いました。


イベントを色々やっていて、そこに、私のお客様に連れられて。


年齢は60くらいかな?

だけど品があって美しい方でした。若い頃はきっと女優クラスだろうな。☆という。


静かな方だったから、イベントにこられた時はわからなかったけど、なぜか大層私を気に入って下さって、あっさりお客様になって下さいました。

後日、いろんな資料をお渡しするため、ご自宅へ向かいました。


書類に書いて貰わなくてはならないこともあります。


古い団地にお住まいでした。


キョロキョロと団地の号数を確認していると、奥の花壇から声を掛けられました。


ほっかむりをした女性が手を振っていました。


イベントのエレガントな印象と全く違う陽気な雰囲気に驚きました。


おいでおいで♪をしています。


行くと、なんと区画の小さい花壇に魔法のように野菜たちがびっしりと産まれていました。ほんとびっしり。


うわ~~~~~~ドキドキドキドキ


私、ほんとうっとりと幸せなキモチになって見とれました。


まさに、こんな所に宝の花園があせるという驚き。


その方は、いとおしそうに野菜の育て方のお話をしてくれました。


私は従順に聞き惚れました。


こういうことに強い憧れを持っているからでしょう。


『あなた、お昼まだでしょ?簡単になにか作るから食べていきなさい』


ふわっと陽光に照らされて美しく微笑みました。

わ~~~いドキドキ


ルンルンとお邪魔しました。


その方は、野菜を適度に摘んで、団地を登っていきます。


今摘んだ野菜とベーコンなんかで、めちゃくちゃ美味しいパスタをさっと作りました。


それから、作り置きしていた野菜料理を冷蔵庫からたくさん出して。


ありあわせでごめんなさいね♪でも美味しいでしょ♪なんてね。


ほんと料理が上手で幸せでした。何より自分で作った野菜で料理できるなんて、なんて豊かなんだろうと、うっとり憧れました。


そうして色んなお話を聴いて、あ、忘れてたけど仕事あせるってことで、色んな資料や書類のお話をしました。


『あ、あのね、私、ちょっと右手が悪いから、あなたが書いて下さる?』


私は実は知っていました。


この方をイベントに連れてきたお客様が、私にそっと耳打ちしていたのです。


『彼女は字が読めなくて書けないの。気難しい昔気質のお父さんが女は学問なんかしたらいかん!って人でね、、彼女は学校に一度も行かせてもらってないの…

彼女はすごいコンプレックスでね、たぶん隠すから、あなた、何かあったら、よろしくね。』


遠い親戚だと言うお客様は、そんな風に言いました。


私は、なにも気づかないふりをして、必要事項を書きながら、字が読めない、書けない世界の膨大な不便さを想像していました。


その方は、昔は踊りの名手で、たくさんのお座敷へ呼ばれていたこと、そういう思い出を語っていました。


この美貌なら相当な人気があったことは簡単に想像できました。


今はそういう世界も廃れたし、年だからね、料亭のお皿洗いに行ってるのよ♪とふわっと話されました。


それから字が書けないから、さりげなく何回も通いました。


いつも花壇の野菜の日だまりの中に舞うように手をふってくれていました。









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