死神は黒猫。 | シン・135℃な裏庭。

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父が亡くなる10日くらい前に、突如として、実家の庭に黒猫の赤ちゃんが一匹迷いこんできたらしい。


同居の孫たちが見つけた。


まだ手のひらに乗るくらいの小さな赤ちゃん。


実家は裏が山で、田んぼと畑に囲まれた壮大な田舎。


どうやってこの赤ん坊がひとりで迷いこんできたのか?


兄嫁は、本来、犬も猫も全くダメで触ることさえ出来なかったらしいけど、その黒猫赤ちゃんはなぜか抱くことができたらしい。


孫と兄夫婦と母は、もちろん、可愛いし、捨てることもできずに、飼うことになった。


しかし、「死」を本当に怖がっていた父が、その猫を見て激怒したらしい。


今すぐ捨ててこい!!!

黒猫はいかん!!!


その前にも、黒と白のモダンなトイレマットを替えてくれとか、そういうことを訴えていたらしい。


だけど、赤ちゃん猫を捨てるなんて誰にもできずに見えないところに移動させてこっそり飼っていたそうだ。


父は、倒れて病院に行くまで、かなり弱っていたけどなんとか普通に生活していたから、日中はみんな仕事や学校へ出るので、一人になる時間があった。


激怒し忌み嫌う黒猫赤ちゃんと、二人ぼっちで過ごす時間にナニかを感じたのか、ナニも言わなくなって、寝て過ごす時間が増えたらしい。


父は、誰もいなくなると意外に優しい顔を出す。

ある日、外にタバコを吸いに出た時に、転倒したらしい。


黒猫のゲージの前で…


その日、転けたことを誰にも伝えずにいたらしい。


黒猫のゲージの前に血が残っていて、聞いたら転けたとのこと。


次の日から、父は、死期に入る動物のように、ナニも食べずナニも飲まず風呂にも入らず布団に籠る。


そして次の日、意識が混濁しはじめて即入院。


それから3日で旅立っていった。


兄嫁に聴いて驚いた。


父が息を引き取る日の朝、黒猫赤ちゃんがいなくなっていた。


子どもたちと兄嫁とで方々を探し回ったらしい。

裏山に黒猫の便らしきあとがあったけど見つからなかった。



死神って、本当は、美しく優しい。


死を怖がって怯えまどう人を、優しくあの世へ導いていく菩薩のような存在。


あの黒猫赤ちゃんは、父の死期あわせてやってきて、父の死より少し早く魂となって、怖がる父を愛らしく導いてくれたに違いない。


ほら♪こっちだよ。☆


なんて、丸っこい身体ときゅっと上がったしっぽをたてながら。


父が予感し、予感したから激怒した通り、黒猫は死神だった。


ただ、自らの命を捧げて導くほどの、優しく愛らしく気高い死神だった。☆