「人の目を気にしなくなったきよみは、
かわいい女の子になりました。
男の子を好きと思う心は、いっぱいになりました。
けれど、好きでいっぱいの心に、絵の住む場所はないでしょう。
あの、なにかをのりこえようとした絵は、
幸せで消えるでしょう。
でも、それでいいのだと思います。
お父さん、お母さんの心配も、もういらないのです。
きよみは、あたえられたままで、今、人のうしろにかくれなくなりました。
絵のかけるきよみも惜しいです。
でも、それより人として幸せをつかみはじめたことのほうが、
くらべようもなく大きいことなのですから。』

『たんぽぽの子』より。
宮城まり子さん。☆