梅が満開の頃キミは産まれた。 | シン・135℃な裏庭。

シン・135℃な裏庭。

ブログの説明を入力します。



若い頃、画材店で働いていたことがある。


仕事への向上心?の欠片もなく、ただ色とりどりの絵の具の群れを見つめていたかっただけ。


暇な時は、好きな色の前でポケーっとしていた。

ナンバーワンホステスはあっさりと辞めた。


(この仕事は、愛する人に愛されない仕事だ…)


俗に言われる色恋営業みたいなことは、ほんとイヤだったからね、


笑いと気遣いと人の名前と、その人の趣味嗜好の記憶力が抜群だったから

それだけで、大人気だった。どこへ行ってもスカウトされた。


だけど、変な部分が非常に消耗する。


(あぁ。最後はダレのことも幸せにしない仕事だな…)


そういうことで、色の群れたちは私を癒した。


その画材店に時々いらっしゃるお客さんに、妙に惹かれる人がいた。


ぽそぽそと控えめに油絵の具を吟味し続けていて、何種類かを買って帰る。


おじいさんともいっていい年代だったけど、


その絵の具の選び方が、なんともよかった。


(あ~ほんとに好きなんだろうな~)


という独自の空間が取り巻いていらっしゃった。

時々、領収書をきった。

〇〇産婦人科。


へぇ。お医者さん?


この人ならネーチャーな感じでお産させてくれるかな?


私は密かに、子供を産む産院をここにしよう☆と、あてもないけど決めた(笑)


それから数年のち、憧れのその産院へ通っていた。


だけど、私の妙に好きなおじいさんがいない。


院長は別の人だった。


もう、辞めちゃったかな?


産後の慌ただしさで、そのことも忘れていた。


退院も迫ったある日、助産婦さんから、乳腺のマッサージを受けていた。

助産婦さんはみんな優しくて親切だったな~


『うちの母、今、「孫」を聞きながら電話しよるよ~♪うふふなんて電話してきてね…』


笑いますよね♪


なんて会話していたら、ふと、あのおじいさんが浮かんで、


『そういえば、名前は知らないんだけど、ここの病院に絵を描くおじいさんいませんか?』


??さあ?ちょっとわからないです…。


『そっか~、前にね、画材やで働いていた時に、時々、お見えになっていてね、そのね、絵の具の選び方の風情がなんとも好きでね、子供産むならここだと、決めてたの。産院を選んだ理由がそれなんて、聞いたことないでしょ?」



………。


ひょっとして、〇〇さんのことかな!?


えっ!?いる!?


ええ、〇〇さんは院長の昔からの友達で、定年後に、院の中の雑用をしてくれたり、絵をたくさんかいて、子供の部屋に飾ったり、あそこのアンパンマンの絵もそうなんです!


えーーーーーーーー!


〇〇さん、ほんといい方です!私たちも大好きなんですよ!
あ!今日いらっしゃるから、今のお話、してみます。すごく喜ぶと思いますよ!



ロビーに出てきてくれた〇〇さんは、あの人だった。☆


意味もなく涙が出そうだった。


お話した〇〇さんは、やはり茫洋と優しく、底深い知性を感じる人だった。


アノとき、疲れた私を癒した色の群れの管理人のようなおじいさんだった。



退院後、一枚の絵が届いた。







150124_080614.jpg




末永いご多幸をお祈りしております 〇〇




私の名字と、産まれた季節をとっての梅の花の絵だった。


嬉しかった。ほんとうに。


お礼の電話をすると、奥様がでられた。


『主人はね、ほんとうに喜んでいたんですよ。


なかなかね、年をとると寂しくなるもんでしょ?』




〇〇さん、アノときの子は今年、高校生になります。


早いものですね。


そうそう、あの産院で産まれた親友ね、


奇遇にも同じ高校を受けるみたい♪


梅の満開の頃に産まれた二人は、今でもすごく仲良しです。


不思議ですよね。。☆



お元気ですか?