私の息子。
彼が小さい時、たいへん苦しい時期だった。
特に、保育園の年長さんの頃はその日をどうやって暮らしていくのか…
そういうギリギリの状態だった。
息子は、天から与えられたお地蔵さんのような顔と性質を持っていて
いつもニコニコと笑っている。
時にひどく八つ当たりしても
ニコニコと笑っている。
その顔と、素直に甘えてくる全身全霊の信頼を受けていると
あともう少しだけ。。
と、力が湧いてきた。
小学校に上がる前、
とある事情により、毎日毎日入れ替わり立ち替わり、怖い人が脅しにきた。
息子に悟られないように虚勢をはるだけで精一杯だった。
誰にも相談しなかったし、できなかった。
一度、勇気を振り絞ってその原因となる方へ直談判にいき、渾身の力で、あるお願いにいったけど何も手を打つことはしなかった。
優しいお地蔵さんも、小さいながら心を痛めていたのだろう。
アトピーがひどくなっていった。
そうしてアトピーの上に水疱瘡になった。
皮膚がずりむけて、ミイラのような顔になった。
近所の知人は、目を背けながら、自分の子どもを離す。
それでもお地蔵さんは
ニコニコとし続けていた。
私は、もう堪らなくて
人の少ない河原におにぎりを持って連れていった。
ここなら、好奇の目で見られることはない。
私も息子も。。
ほんの束の間、和らいだ春風の中で遊ぶ。
すると三人の小学生が近づいてきた。
無邪気に喜ぶお地蔵さん。
久しぶりのお友達で私も幸せだった。
しかし、彼らは、彼の異様な顔を見にきた。
ということがわかった。
相変わらず嬉しそうに笑う息子。
限界だった。。。
もう、一ミリも力を抜くと、涙が決壊したように溢れる…
そして、立ったまま気を失う。。
ありったけの力で堪えた。
小さなぷっくりとした手が、私の手の中に入ってきた。
手を繋ぎにきた。。
春霞みにゆれながら、彼のミイラのような顔は
私を見上げながらニコニコと笑っている。
その時、私は、ハッキリと自分の足が底を蹴ったのを感じた。
一番の底を蹴った。。
最悪の地獄の蜘蛛の糸は
息子の小さい手だった。
神様からの授かり物。
私の息子は、お地蔵さんのような顔を今もしている。
思春期だし、体も私よりはるかに大きくなった。
たまに寝顔をみると
あの日は、私を助けてくれてありがとう。☆
と、心の中で祈る。。☆