『素直に、自分の癖を取って、
自分で考え、工夫して、努力して初めて身につくんです。
苦労して、考え考えしてやっているうちに、ふっと抜けるんですな。
そしてこうやるのかと気がつくんです。
こうして覚えたことは決して忘れませんで。
教えるほうも、弟子のそんなようすを見ながら、
ぽつんと言うんですな。
その言葉はこうしろ、ああしたほうがいいというのとは違いますのや。
遠回しやけども、考えや創造力が膨らむようなことを言いますのや。
おじいさんがそうでした。
そのときはわかりませんわな。
しかし、何かのときに、
ふっとこういう意味やったんやな、
ということがわかるんですな。
刃物を研ぐときだけでなく、
すべてにおいてそうでしたな。
『木のいのち木のこころ』
最後の宮大工棟梁
西岡常一さん。。