棟梁の心構え | シン・135℃な裏庭。

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『気に入らんから使わん、


というわけにはいかんのです。


自分の気にいるものだけで造るんでは、木の癖を見抜いてその癖を生かせという口伝に反しますやろ。


癖はいかんものだというのは間違ってますのや。

癖は使いにくいけど、生かせばすぐれたものになるんですな。


それを辞めさせ、あるいは取り除いていたら、いいもんはできんのです。

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棟梁の心構えにこないなものもありますのや。


『百論をひとつに止める器量なき者は慎みおそれて匠長の座を去れ』


口伝のなかでも一番気に入っているものですが、

このとおりですわ。


たくさんの職人をひとつにまとめられなかったら、


自分に棟梁の資格がないんやから自分から辞めなさい、というんですな。

適材適所といいますが、

いいところばかりではなしに、


欠点や弱点も生かしてその才能を発揮させてやらなならんのです。


いいとこだけを拾い出して、


いいとこに並べるというのとは違いますからな。

人を使うにはそれだけの心構えがいるってことですわ。


木を見るのも難しいですけど、人を見るのも難しいですな。


よく嫌なやつを無理して使うことないやないかと言われますが、


そういうわけにはいきません。


そういうわけにはいかんというよりも、


そういうふうに言われる人でも使えるところがありますのや。


おもしろいことにそういう癖のある人にとても間に合うところが必ずありますさかいに。


私は長いこと棟梁をやってきて、


使えんから首にしたことは一度もありませんな。』







『木のいのち木のこころ』より。



最後の宮大工棟梁



西岡常一さん。。