「そのドクターによれば、
患者たちは傷の手当てをしてもらうとき(インドのハンセン病患者)
できるだけ、太い包帯で巻いてもらうのを喜んだ。
日本人なら手足の包帯は可能な限り細い方が
行動の邪魔にならなくていい、と思う。
しかし、患者たちは、ほんの1、2時間の間しかその輝くような白さがもたないにせよ
包帯は太いのを喜ぶのであった。
なぜなら、それは彼らが、人間として愛されているという証だからであった。
目をかけてくれるひとがいる。
という実感を
その真っ白に輝く包帯は示していた。
彼らの生活の中では
恐らく純白という色は
視界の中で
その包帯だけなのである。
天上の青
曽野 綾子 著 より☆