大学は京都だったが、部屋にエアコンは無かった。

付けたければ自分で買わなければならなかったが

買おうという発想がなかった。

ただ、盆地の夏の蒸し暑さは想像を絶するものがあって

6月からずっとぐったりとしていた。

扇風機をつけても部屋の熱気が回っているだけで意味が無く、

一台の冷風機でなんとか夏をしのいでいた。


地方に帰っても、安い部屋でエアコンは無かったが

あの京都の夏にも耐えられたんだからと

そのままで生活していた。


タカシが転がり込んできた年は

数年ぶりの猛暑で、毎晩熱帯夜が続いた。

一台の冷風機の前をタカシが独占し、風が遮られて眠れなかった。

結局、自分さえよければいい人なのだ。

それでも暑くて耐えられない、エアコンを買わないかと何度も言われた。

知り合いからもらって来ようかとも言った。

それでも絶対にエアコンは付けなかった。


欲しいなら自分で買えばいい。

暑くて眠れないなら、この部屋に帰って来なければいい。

いや、いっそ出て行って欲しい。

私も一人の方がちょっとは涼しく眠れるし

一人だったら自分のためにエアコンを買っていたかもしれない。

でも生活費も入れないタカシのために買ってあげる気はない。


お金を盗られても心まで盗られていないと思っていた。

だから騙されて貢がされる女とは違うと。

周りから見れば違いは無いのに・・・


結局タカシはほとんど毎晩帰ってきて

ずるずると生活は続いた。

タカシはパチンコ依存症だったと思う。

当時はそうと気づかなかったけど

きっと私が思っていた以上にパチンコにのめり込んでいたのだろう。


自分ではあまり行かないと言っていたけど

いつもいろんな言い訳をしては人から金を借りたり

(私の財布から盗んだり)しているのに

たまに、たまたま行ったら勝ったからと言って

ご飯をおごってくれたり、貸したお金の一部を返してくれたりした。


人のアパートに住んでおいて生活費も入れないし、

もともと私のお金なんだから返すのも当たり前なのに

返す時は逆に恩着せがましいのが嫌だったけど

まあ、無いよりはましだから受け取っておいた。


この、たまに返すというのがあったから

いつかはちゃんとしてくれるんじゃないかと思ってしまった。

それまでに渡したお金を全部捨てても

さっさと別れてしまったほうがよっぽど自分のためだったのに。


負けたときは言わないで

勝った時だけ、たまたま行ったら勝ったからって

そんな毎回毎回タカシだけが勝てるわけがない。

それはわかっていたんだけど

当時はパチンコがそれほど深刻な問題だとは思っていなかった。


学生時代に少し付き合った彼も

金と女にだらしなかった。

高校時代に好きだった人に顔が似ていて

ほとんど一目惚れだったけど

二回目に貸した五万円を返してくれなくて

授業料と思って諦めた。



数ヵ月後、何も無かったように電話してきて

「また会いたい」と言った言葉に

「ふ~ん」と答えてそれっきり。



そう、授業料を払っていたのに

なんでまた同じ様な人に引っ掛かるのか。

今回はなぜ別れられなかったのか。



同棲していて追い出せなかった。

付き合ってすぐに別れて、

やっぱり騙されていたんだと周りに思われるのが嫌だった。

他に好きな人もいなかったから

「かっこいい彼氏」を金で買っていると自分で割り切ろうとした。

並外れた容姿で、セミプロの劇団員だったから

いつか大成功するかもしれないという欲もあった。



でも一番の理由は

他の人にはわからないだろうけど

こう見えてタカシは私のことをすごく好きなんだと

それだけは本気で信じていたから。

数々の嘘は、途中からは聞いているほうが恥ずかしいくらいで、

いつも信じているふりをしていただけだったけど

その一点だけは最後の最後まで騙されていた。


この人の心を救ってあげたいと思っていた。