透きとおった空気の底で

奇妙な夢をみる

となりにいたのは、あなたで

わたしたちが祈った神ではない

 

ふたりが見たはずの

昨日の「悲しみ」は、もはやどこにもなく

(もう、いいの・・・)

 

今日の在ることを

あなたは知っている

やがてくるだろう

明日の不在を

あなたは見ることはない

 

透きとおった空気の底で

悲しげな夢をみる

となりにいたのは、あなたで

もちろん、ルオーが祈った神ではない

わたしの愛するものは

あなた以外になく

やはり、あなたでしかなかった

 

 

からませた

あなたの指に

くちづけをする

愛がみえる

愛はみえる

愛はみえるのかしら

 

愛という

かたちもないものに

ねえ、わたしたちは運命をゆだねてしまうのね

あなた、いまも、わたしを愛してくださる?

眉をひそめ

なかば、困惑したかのように

 

消えかかった

顔をかたむけ

あなたは問いかける

 

(ねえ、あなた、いまも、わたしを愛してくださる?)

 

 

透きとおった空気の底で

不思議に、はかない夢をみる

となりにいたのは、あなた

あなた以外になく

ふたりの

ひそやかな営みは

髪から落ちる

ひとすじのしずくとなって

 

 

暗い底へと

落ちていく

 

どこまでも

どこまでも

伝わり落ちて

 

 

あえぐ

汗ばむ

重なり合った同心円から

ふっと力が抜けて

やがて一瞬、暗くなる

(ふたり、がっくりとうなだれる)

 

 

 

透き通った空気の底で

奇妙な夢をみる

となりにいたのは、あなた

あなたでしかなく

ようやく、気づいた

「神の不在」に

 

わたしたちは、明日を夢みることはない

 

✤お借りしたものです

 

 

                            ー途切れた記憶をたどってー

    

             10.23       2016