おんなが

おんなであることを誇らしげに

見せびらかす

この時代に

 

か弱い男を演じる

男としては失格であるが

かといってオカマでもなく・・・

 

あまりに繊細なシューベルトと

湾岸戦争で活躍したシュワルツコフの間には

遠く三億光年の距離がある

 

等分にめくばせして

平凡な毎日という

薄氷の上を

おそるおそる歩く

 

僕は,二人のように

この地球が生み出した傑物ではなく

どちらかといえば臆病なかたつむり

 

いえいえ、そうではありません

ひとりの人間

男でもなくおんなでもなく

ひとりの人間

 

この地球に生きる

たんなる

無色の存在

 

 

 

おんなが

おんなであることを、これ見よがしと

見せびらかす

この時代に

 

都市のひとごみを

ひとりぼっちでしか

あるけない

(この、甲斐性なし!)

 

つい、うつむく

目線の先を

ほこりが舞っている

 

 

舗道をひとが行きかい

「毎度、おおきに!」と

威勢のいい声が聞こえる

 

ちいさな女の子が、母親に連れられ

風船をもってあるいてくる

「・・・・・」

向こうでは

たこ焼きをを求める、ひとのながい行列

 

あっけらかんとした平和があり

活気にみちた

大阪の光景がある

(この、ありふれた生活の匂いを気に入っている)

 

そのなかを、どこまでいっても

いつもひとり

なぜ、ひとりなのか

わけもわからず

いつも、ひとり・・・

たんなる、無色の存在

 

 

 

突然、頭のなかで、アナウンスが鳴り響く

こんなときに、なんでやねん!

寝起きを、起こされたように腹が立つが

同じ時代を生きるものの「よしみ」

僕は、ひとの頼みを断れない

 

(そのとき、地球の裏側で、何が起きているのか?)

 

 

 

突然、ギリギリと痛み出す

頭のなかでで、誰かがつぶやく

遠い世界から聞こえてくる

「何かがちがう」

「何かがちがうと・・・」

 

思わず、しゃがみこんでしまった

僕の傍らを

一組のカップルが通り過ぎ

つい、スカートの端が

肩にふれた・・・

 

「変なひと」

「あぶないから、関わり合いにならんほうがええで」

 

遠くに去っていく

声をかすかに、聞いて

そのとき、僕は妄想(みた)のかもしれない

 

(大地に咲く悲劇と喜劇の中間で、今日もゲリラは、銃弾を撃つ!)

 

 

 

しばらく、時間が止まった

そんな気がした

ひとびとの姿がどこかに消え

喧騒がぴたっと止まる

ここは、いったい何処?

 

道頓堀の真ん中で

何かが止まる

 

 

 

どんくさい!

今からふりかえっても、ドジと「阿呆」まる出し

(初デートで、手がふるえ、砂糖たくさん、こぼしてしもた・・・)

コーヒーカップにそそぐ

うつろな目線

上からひびく、言葉をおぼえている

「あんた、ほんと、不器用やな」

 

(今も、心のどこかで愛している・・・)

 

神戸生まれのあの子は

とても、気が強かった

「おとこがいなくても、めざすものを持ちたいんや」

煙草をくゆらせて、うそぶいた

一瞬の残像を

いまは、思い出すまでもなく

 

 

 

われに返ったとき

突然、季節はずれの雪が舞った

 

冷たいものが、まぶたに滲む

唇がわななく

そのとき、たしかに

僕は、立っている

泣くこともできず

わめくこともできず

 

僕は、ひとりの人間

男でもなくおんなでもなく

ひとりの人間

この星に生きる無色の存在

 

 

ひとごみにわきかえり

雪がちらつく

道頓堀の真ん中で

 

 

 

 

 

         

                      10.16    2016