【前回のこと。】
これは完全なる続き物ですので、前回分が読みたいという奇特な方は、記事テーマから”シリーズ「私」”で探して下さい。
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【すべての始まりは、きっとここ。】
岡崎市の某小学校に入学したところから。
私の生活はどうということはなかった。
とにかく祖父にはよくしてもらったし、そのおかげで小1の時には既に普通の漢字はだいたい読めた。九九も既に覚えていた。
ちょうどこの頃、家では転居を考えていたようだ。
岡崎の店が住まいになっていたとは言え、岐阜の土地と家も持ったままだったようで、この岐阜の家を建て直して、そこで生活しようということだった。
私も建築途中の岐阜の家を見たことがある。
祖父と一緒に見に行った。
祖父が梁のような部分(低い位置だったけど)の上に乗って、その木材が折れて、祖父が落ちたことを覚えている。
怪我はなかった。
とにかく、祖父の記憶はたくさんあるが、この頃の父の記憶はほとんどない。
私の家の者は皆、岐阜の家が完成することを心待ちにしていた。
そんな中、ある晩、祖父は死んだ。私の寝ている隣で。
心筋梗塞だった。
とにかく泣いた。
私が当時、死の意味を分かっていたかどうかはわからないが、とにかく泣いた。
直後、私はお経を覚えた。仏説阿弥陀経や正信念仏偈というやつだ。
これで誰よりも好きな祖父が幸せになれると信じていた。
家の中が落ち着いた頃、岐阜の家は完成した。
その完成は、遅すぎたが。
一家は岐阜の家に引っ越していった。
私が、小学1年生の冬のことだったと思う。
父は、岐阜県の関市に新たなパチンコ店を開業させた。
この店が、私たちの新しい糧となった。
私はこの時、岡崎の店がどうなったのかなど、知りもしなかったし、気にもとめなかった。
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【大人になってから聞いたこと。】
①岡崎の店はどうなったのか。
祖父がなくなった後、父は「祖父に話を持ちかけた、韓国か朝鮮の人たち」に呼ばれた。
話の主旨はこうだ。
「俺たちは、お前の親父さんに名前を貸してくれるように頼んだ。しかし、お前にそれを頼んだ覚えはない。だから、岡崎の店はお前のものではない。」
この話が正当な話なのか、無茶な話なのかはわからない。
とにかく、私たちは「追い出された」のだ。
そして、生活の糧はなくなってしまっていたのだ。
だから父は、関にパチンコ店を建てなければならなかった。
②関の店はどのようにして建てられたのか。
当時もそうだし、今もそうだが、パチンコ店を建てるには、相当なお金がかかる。
土地や建物だけでなく、設備や台にも相当なお金がかかる。
当然。
そんなお金は家にはなかった。
父は、追い出した人たちが許せなかったのだろう。
自らのプライドも許さなかったのだろう。
自分の身の丈を超えるような、莫大な借金をして、この店を建てたらしい。
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【岐阜での生活。】
新しい生活が始まった。
新しい家は、本当に立派なものだった。
小学1年生なのに、8畳ほどの部屋が割り当てられた。
夜は、星がよく見えたことを覚えている。
祖父がいるはずの仏壇もとても立派だった。
まだこの頃は、よくお経を読んでいた。
新しい学校は、とてもしっくりきた。
友達付き合いも楽しかった。
山を切り開いて住宅地を拡張していたので、近所にはげ山があって、よくそこで遊んだ。
私の家の方針で、ファミコンは買ってもらえなかったから、友達の家でよくやった。
父、母、祖母は、みんなで関の店を切り盛りしていた。
だから、私の学校が終わる頃に、父か母が迎えに来て、店に連れて行かれていた。
パチンコ店にもかかわらず、夕方以降は店の中や店の2階、もしくは、祖母が詰めていた「景品買取場」の中にいた。
景品買取場の中では、ガンプラを作ったり、祖母に編み物を教えてもらったりしていた。
この生活は、小学2年から小学4年の春頃まで、約2年間続いた。
小学3年の頃だろうか、初恋をしたように思う。
店にパチンコをしに来ていた夫婦のお客さんが、子供を連れて来ていて、その女の子と店の駐車場で遊んでいた。
どんなことをして遊んでいたかは覚えていないが、とにかく、パチンコ店の駐車場は広かった。
自分達の運動場のようだった。アスファルトだったけど、電灯もあって明るかった。
その子と走り回っていたように思う。
きっとその子のことを好きだったんだと思う。
でも、彼女とご両親は突然お店に来なくなってしまった。
ていうかさ。
明るいとは言え、パチンコ店の駐車場で子供二人が走り回っていたら危ないと思うの。
普通に考えたら。
でも、双方の親はそんな心配はしなかった。
なぜなら、駐車場には車がほとんどとまっていなかったから。
(つづく。)