昔こんな事があった
自分は高校卒業を機に実家を出てすぐ近くの文化住宅で部屋を借りた
文化住宅
最近はあまり見かけなくなったが
２階建ての集合住宅でちっちゃい台所と四畳半と六畳間があり
トイレはあるが風呂はあらへん
すぐにみんなのたまり場となる
毎日夜遅くまでようあんな色々しゃべってたなぁ～いうぐらい昔はグダグダしとった
その日も夜中２時頃あーだこーだ言うてると
んっ
なんか聞こえる
俺の部屋は２階の角部屋やったんで
窓が一つだけありその窓がなんか赤い
んっ
開けてみると近所のおばちゃんが泣きながら助けを求めてる
火事やー
そのおばちゃんとこ１階が工場で２階が家
その工場がけっこう燃えてる
すぐに１１９番した
慌てて外へ飛び出してまず実家の親んとこへ
火事やー起きろー怒鳴ったら
親父が裸足のまま飛び出して来よったがな
二人で近所の家片っ端から起こしてすぐに人だかり
消防車なかなかけーへん
家の前は軽四がなんとか通るぐらいの狭さで
だんだんものすごく燃えだしてる工場の前に軽トラが止めてあった
引火したら軽トラ爆発して大変なことになる
どかそ言うてもカギかかってる
その辺のもんに誰か石持って来い言うたら
よりによって10キロぐらいのでかいのん持ってきよって
もっとこましなんないんかい思たけど
そんなん言うてるまーあらへん
俺はおもいきり運転席めがけてその大きな石をぶつけた
もちろん割れた
めっちゃ割れたわ
すかさず親父がガラスバリバリの運転席に乗り込み
おまえらみんなで押せー言うてみんなで押した
そんなんしてたらやっと消防車が来たがなんせ狭いから工場前まで入られへん
ホースを伸ばして色々必死でやってはんねんけど
見てたらイライラしてきて
こらぁーモタモタせんと早よ消せやーって怒鳴ったら
うるさいわー言うて怒鳴り返しよっててんやわんやの大騒ぎ
燃えてる工場の左側にうちらの実家があり
右側はうちらの近所で一番大きな家があった
そこにお嬢さん二人おってんけど
普段はフンｯ長屋の貧乏人がって感じでツンツン澄まして歩いてたお嬢さんが
風が左側に吹いてる時はなんも言わへんかったけど
風向き変わって右側へ火の粉が流れると
消防士に向かって
こっちから消してー
うちの家が燃えるぅー
って絶叫しとった
結局消防士のおかげで朝方までかかったが
工場だけが丸焼けで収まった
やれやれ思うて家帰るとなんか足が痛い
よう見ると足の親指の爪が割れてめっちゃ血が出とる
興奮しとったからわからへんかったけど
ガラス割って軽トラ動かした時
自分で押して自分の足ふんずけとってん
そら痛いわ
次の日
昨日はありがとうって軽トラのおっちゃんからお礼言われたけど
丸焼けなったおばちゃんかわいそうやったな
その後火事が原因で工場は辞め
数年後お嬢さんとこが買い取って畑にしはりました