夏が来ると冬がいいという、冬になると夏がいいという。
太ると痩せたいという、痩せると太りたいという。
忙しいと閑になりたいという、閑になると忙しいほうがいいという。
自分に都合のいい人は善い人だと誉め、自分に都合が悪くなると悪い人だと貶す。
借りた傘も雨があがれば邪魔になる。
金を持てば古びた女房が邪魔になる。
上を見ては不平不満に明け暮れ、隣を見ては愚痴ばかり。
いったい自分とは何なのか。
親のおかげ、先生のおかげ、世間様のおかげの魂が自分ではないのか。
おれがおれがを捨てて、おかげさまでおかげさまでと暮らしたい。
「野村ノートより」