恥ずべきことなのか、恥じる必要はないのかわからないが、我が子は福本漫画を愛読している。
福本伸行といえば、言わずと知れたギャンブル漫画の第一人者。
なぜそのような類いの漫画を公然と子供たちが読んでいるのか。
元はと言えば、20年ほど前、夫が私にカイジシリーズをすすめたことに端を発する。
最初あの作画を見たときは驚いた。
アゴの鋭利さがハンサムすぎるし、歯が奥まで30本以上キチキチに生えてるし、ざわざわしているだけでページ終わるし。
今までふれてきた漫画とはあまりにも種別が異なり、正直相容れぬと思ったのだが、恐る恐る読み進めていくと、ギャンブルだけではない人間模様の描き方、緻密な心理描写、発想の突飛さ、社会の在り方、語句の使い方、熟語のセンスなどにたちまち惹かれ、すっかりはまってしまった。
その後も『無頼伝涯』『告白』『銀と金』『黒沢最強伝説』、スピンオフの『トネガワ』『ハンチョウ』と夫の推し漫画を愛読し続けた。
さすがにアカギは候補にあがらず…長すぎるw
なかでも『黒沢最強伝説』は本当におもしろくて、新シリーズ含め自ら全巻購入してしまったほど。
不器用ながら強く生きる黒沢の一挙手一投足が笑いを誘い、涙を誘う。ギャンブル要素もなく多くの人に読んでもらいたい漫画だ。
だが、考慮が必要な作品もある。
『銀と金』が原因で、かつて危機感を覚えた出来事があった。
単なるモノマネを披露するつもりだったのだろうが、
「ワシは人を飼っておる」
と言い出したときにはさすがに焦った。
法外なレートと独自のルールで展開される誠京麻雀編でのワンシーンなのだが、まるで世のスタンダードみたくあの場面を切り取るもんだから、冗談にしてもよろしくはない。
人は飼わない!監禁!監禁罪だから!現実でやったら捕まるから!てかお金賭けるのもダメだから!と、かなり真面目に誠京麻雀の異様さと違法麻雀について説いた。
長男はまさかの蔵前のモノマネで爆笑していたが、次男は人を飼うことの違法性はもちろん理解していたものの、麻雀は賭けて当然だと思っていた節があったので驚き、慌てて是正した。
これは紛うことなく親の責任。
家庭環境って大事だな。
誰でも読める場所にギャンブル漫画なんて置いちゃダメだね。
誰でも読めるブログで夫の賭け麻雀について書いちゃう子育てブロガーもいるけどね。
もちろん、雀荘や競馬場、パチンコ店などに足を運ぶことはないけれど、
子供が「バケンアタラナイヨ」とか「ありとあらゆるギャンブルに手を染めたい」とか「甲子園で賭けられるらしいで」とか言い出す未来は絶対に避けたいので、
とりあえず麻雀に関しては、将来興味を持つことがあっても、賭け事としてではない楽しみ方をするよう伝えた。
違法薬物で捕まった人がよく言う言い訳。
「大麻なんて合法の国もあるんだから」。大麻を入口にして、MDMAやコカイン、果ては覚醒剤に手を染める。
日本ではなぜ違法なのか、考えたほうがいい。
じゃあ、違法賭博で捕まる人はなんて言い訳するんだろうね?
「カジノなんて合法の国もあるんだから」か。
あれ、かのご家庭のシンガポール旅行の目的って何だっけ。
件の元通訳の入口は何だったのだろう。
ポーカー?花札?
高校野球…はさすがありえん、やめてくれ。
分別のつく大人でさえも依存し、身を滅ぼす可能性のあるギャンブル。
ましてや子供なら影響も大きかろう。福本漫画愛好家としては、好きだからこそ子供がここを入口にギャンブルにはまらぬよう注意する責務がある。
漫画は娯楽として、きちんと現実と区別をつけて健全に楽しんでほしい。
まぁ、それが普通。
親の姿勢としてごくごく普通。
でももし、自分の悪行を省みず、子供にまでひいては子供のクラスメートにまでギャンブルを推奨するような親がいるのであれば、法の裁きという分かりやすい形でお灸を据えられたほうが、子供のためではあるまいか。
お金を賭けずとも、きっとお望み通りのヒリつく緊張感を存分に味わえるに違いない。