長男が生まれた頃に席巻していた子育て論がある。
それは、「怒る」「怒鳴る」は怒りの感情に任せているからよくない、注意すべき行為についてのみ「叱る」ことを意識しましょうといった考え方の子育てだ。
感情的に怒らず、諭しながら叱る。
なるほどと思いそのように努めたが、なかなか理想通りにはいかず苛立つ場面は多々あった。

それから少しして耳目を集め始めたのが「叱らない育児」。
上記の子育て論と根っこは同じで、メソッドとして確立したことでより世間に広まったように思う。
教育評論家の尾木ママが、この「叱らない育児」の提唱者として有名で、
「感情的に怒らず、優しく言い聞かせて理解を促す」という考え方をもとに、「子供の好奇心や自尊心を尊重し、叱るよりほめることで成長を促す」育児法を主張している。

勘違いされがちだが、これは「叱らなくていい育児」ではない。
「叱らない育児」という言葉だけが一人歩きし、子供が他人に迷惑をかけているにもかかわらず叱らなかったり、危険な行為をしているのにただ見守るだけだったり、と一部で間違った「叱らない育児」をする人もいるが、そうではない。

叱らずに済むようにするには、日頃から子供の気持ちに寄り添い、理解を示し、そのうえで何が問題か気づかせ、さらに相手の気持ちを考えさせる、といった面倒な過程を何度も繰り返さなくてはならない。
そう、「叱る」って行為は、基本的にめんどくさく、根本に愛情がないとできない行為なのだ。

特に幼子相手だと、噛んで含めるように伝える必要があるし、社会通念がわからないからそこから教えないといけない。
だから、そういう面倒な部分をすっ飛ばして、この耳障りのよい「叱らない育児」にのっかり、本当に文字通り叱らない親が現れたのだと思う。

この勘違い育児の末、叱られるべきところで叱られなかった子供は、大きくなってからトラブルメーカーになる確率が高い。
だって何か悪くて何が良いのか親から教わっていないのだから、そりゃそうなるだろう。

人を育てるって本当に大変だ。
以下、心の声は割愛する。