リモコン、エアコン、シネコン、カラオケ。
世の中にはあまた略語があふれていて、
あまりにもその語が浸透してしまうと、
元が何だったか瞬時に思い出せない。
上の例で言えば、リモートコントローラー、
エアーコンディショナー、シネマコンプレックス、空オーケストラといった具合。
もう略さず言う人に出会うほうが難しい。

それでは、ワンオペとは何の略か。

ワンオペレーション。
もとは、某牛丼チェーン店において、
一人ですべての業務をカバーしなくてはならないブラックぶりが社会問題となったことで浸透した言葉だ。
ドラマ『問題のあるレストラン』で、
松岡茉優の長台詞の中に出てきたのが
印象的だった。

いつしか保護者一人が育児や家事に従事している状態、とくに母親の負担を問題視する際に使われるようになり、今やワンオペはワンオペ育児を指すことのほうが多いように感じる。

私の育児は2007年にスタートしたが、
当時、夫のいない平日において子育てが大変だった場面はたくさんあったけれど、
それを巷で言う「ワンオペ育児」だったのかと回顧すると疑問が残る。

そもそも仮にワンオペだったとして。
その状況が苦でないなら、物理的にはワンオペでも精神的にはワンオペではないと言えるのではないか。

幸い我が夫はとても思いやりのある人間で、
日頃から労いの言葉をくれた。
おかげで精神的に追い詰められるようなことはほとんどなく現在に至っている。

もちろん、ケンカすることもあったし、単身赴任時には手の足りなさに悩んだこともある。

でも、夜泣きがあれば交代であやしてくれた夫、休日には率先して子供の相手をしてくれた夫、時にはマッサージや美容院に行く自由時間を作ってくれた夫を思い浮かべたとき、「私ばかりが大変な思いをしている」なんて負の気持ちになる理由があろうか。

何より乳幼児期の子供の成長を間近で見られた、あの子育て黄金期。
つらさより楽しさがまさっていたし、夫が見逃した数々の名場面に立ち会えた喜びを考えたら、ワンオペ万歳だ。

しかしながら、育児に対する価値観はさまざまで、夫の子育て不参加を何年にもわたって恨み続け、ついには賠償金がわりに高級腕時計を買わせたと意気揚々と語る人もいるのだ。
高級品をもらわなければ心の安定を図れないほどに子育てがつらかったのだろうか。
毎日子供たちと接していて楽しみも喜びもなかったのだろうか。

だとしたら、悲しい人生だ。
その母親が、ではない。
そんな風にしか思ってもらえない、
子供たちが、だ。