朝から、空はずっと同じ色をしていた。晴れきらず、雨にもならない、少しだけ湿り気を含んだグレー。
今日は、このくらいの明るさがちょうどいい。そう思えた午後だった。

小さな後悔が、心の中で積もっていく音がする。

コト…コト…コト…と、誰にも聞こえないくらいの静かな音で。

あのとき言えなかった言葉。
あと少しだけ優しくできたかもしれない場面。
取り戻すほどではないけれど、忘れるには少しだけ重いものたち。 

抱えたまま、歩いていた。


 特別な場所ではなく、いつもの道を通って、いつもの見慣れたお店に入る。ぼんやりと通路を歩いていると、ふと、上から光を感じた。


 顔を上げると、天窓から差し込む淡い光が、店内の空気を静かに満たしている。 

 いつも見慣れているはずのその場所が、その日だけ、
まるで教会のステンドガラスの下にいるように見えた。


 色はほとんどないのに、やわらかく、透けるような明るさ。
ほんの一瞬、 心の温度が、すっと上がった。 


 何かが解決したわけじゃない。
後悔が消えたわけでも、気持ちが軽くなったわけでもない。それでも。


 ああ、今日にも、
こういう光があるんだな、と思えた。 


 グレーの空は、何も与えてくれないようでいて、強すぎない光を静かに落としてくれる。
元気にならなくていい日。

前向きにならなくていい日。

 そんな日の心には、このくらいの明るさが、

ちょうどいい。

帰り道、空を見上げると
同じ色のまま、少しだけ優しく見えた。