John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies! -38ページ目

John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

ハンドメイド・エフェクター・ブランドBOOROCKS(ブロックス)のスタッフによる、音楽(BEATLES & Fender)と映画の気ままなブログ。

こんにちは。まだまだリハビリ治療中のJohnです。これまで過去の記事をまとめる作業をしてきましたが、今回はビートルズ・アンソロジーにもつながる、未発表アルバム「セッションズ」についてまとめました。長い話だったので、二週にまたがってしまいますが、よろしくお願いします。お楽しみください。


未発表アルバム「セッションズ」


 1995年からリリースが始まった『ビートルズ・アンソロジー』で、彼らの未発表曲がやっと日の目を見たが、その十年以上前にEMIでは未発表曲をまとめたアルバムを作りかけていた。それが『セッションズ』だ。この幻となったアルバムがあればこそ、『アンソロジー』が実現可能となったと言っても過言ではない。この項では、その幻のアルバムにスポットを当ててみよう。

1)幻のアルバム『セッションズ』前史 ~ ジョン・バレット・テープ

 この話はまず1980年にさかのぼる。当時、EMIアビイロード・スタジオでは、ケン・タウンゼンドが総支配人の重責を担っていた。元テクニカル・エンジニアのタウンゼンドは、『SGT.Pepper's』のエンジニアをしていた人物だ。そしてここでもう一人、この項の胆となる人物、ジョン・バレットにご登場願おう。

 ジョン・バレットもエンジニアとして、60年代後半からアビイロード・スタジオで働いており、ビートルズのEPボックスに収録するためのミキシング作業に携わっており、「ジ・インナー・ライト」のステレオ・ミックス制作においてバランス・エンジニアを務めている。

 そのバレットが1980年に癌であることが判り化学療法での治療のため、レコーディング現場を離れねばならなくなかった。この時タウンゼンドは、バレットにビートルズ音源の整理の仕事を与えた。レコーディング作業に関わる仕事を生業とする者であれば、自ら懇願しても従事したい仕事であった。バレットはこの作業に夢中になりった。

 バレットが行った作業は、倉庫に眠るビートルズの全マスター・テープの中身をデータとして記載することだった。すなわち従来までは、ビートルズのマスター・テープに触れることはタブー視されていたことであり、それゆえにレコーディング内容に関する詳細なデータは存在しなかったのだ。バレットはこの仕事を完璧に成し遂げた。

ところが、バレットの成し遂げた作業はこれだけにとどまらなかった。将来、EMIがリリースできそうなビートルズ音源の編集まで行っていたのだ。彼はそれをカセット・テープにまとめていた。折しも1982年は、ビートルズのデビューから20周年を迎えようという時期であり新たな企画としてこの未発表曲を目玉としたビートルズのアルバムのリリースが実際に検討されるに至ったのだ。しかし、アップルとEMIは印税の支払いを巡って係争中であり、その計画は自然消滅的に潰えたのだった。

しかし丁度その頃、ジョン・バレットの編集したテープを活用出来る企画が持ち上がる。


2)特別上映フィルム『ビートルズ・アット・アビイロード』

 ジョン・バレットの編集した音源によるビートルズ未発表曲集の企画は流れましたが、丁度時を同じくしてアビイロード・スタジオの改装が行われることになり、それに合わせてスタジオを一般に公開する計画が進んでいた。そして、そのアトラクションの一つとして、アビイロード・スタジオ内で行われたビートルズのレコーディング・ヒストリーをショート・フィルムにして公開することになったのだ。

1983年7月18日から9月11日までのおよそ二ヶ月間、そのフィルムが公開されたが、バレットの編集したテープを元にしたサウンドトラックが付けられていた。ここに初めてビートルズの未発表音源がスタジオで公開されたのだ。そのフィルムの内容は次の通りだった。

映画『ビートルズ・アット・アビイロード』
1.ラヴ・ミー・ドゥ・・・リンゴがタンバリンを叩いたオフィシャル・ヴァージョン。
2.ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット・・・基本的には『アンソロジー』収録ヴァージョンと同じだが、2コーラス目からフェイド・イン、間奏前でフェイド・アウトしている。
3.アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア・・・スタジオでの制作過程を追う様に、未完走の初期ヴァージョンから完成ヴァージョンまでの様子を編集でまとめている。
4.ツイスト・アンド・シャウト・・・オフィシャル・ヴァージョンと同じ。
5.ワン・アフター・909・・・1963年ヴァージョン。間奏前にフェイド・アウトする。
6. ドント・バザー・ミー・・・テイク1とテイク2。前者はイントロ終わりで歌が始まるとすぐに中断。後者は途中でフェイド・アウトする。
7. ア・ハード・デイズ・ナイト・・・イントロのやり直しを三回繰り返した後、歌に入る部分からはオフィシャル・テイクになる編集。
8. リーヴ・マイ・キトゥン・アローン・・・『アンソロジー』収録ヴァージョンと同じだが、途中でフェイド・アウトしている。
9. アイム・ア・ルーザー・・・前の曲と同日に収録された曲というアナウンスがあり、この曲が流れる。基本的にはオフィシャル・テイクと同じ。
10. シーズ・ア・ウーマン・・・テイク1。ベーシックな部分は完成しているがリード・ギターがまだない。途中でフェイド・アウト。
11. ティケット・トゥ・ライド(涙の乗車券)・・・前の曲とメドレー状態で流れる。オフィシャルと同テイクだが、リミックスされており、ジョンの声がオン気味、ポールがオフ気味となっている。
12. ヘルプ!・・・オフィシャルとは別テイクのベーシック・トラックのみで、まだ歌とリード・ギターは入っていない。
13. ノーウェジアン・ウッド(ノルウェーの森)・・・オフィシャルとは別テイクだが、途中でフェイド・アウトしている。
14. アイム・ルッキング・スルー・ユー(君はいずこへ)・・・『アンソロジー』収録の別ヴァージョンと同じだが、途中でフェイド・アウトしている。
15. ペイパーバック・ライター・・・基本的にはオフィシャルと同テイク。
16. レイン・・・これも基本的にはオフィシャルと同テイク。
17. ペニー・レーン・・・基本的にはオフィシャルと同テイク。
18. ストロベリー・フィールズ・フォーエバー・・・『アンソロジー』に収録されたテイク1に始まり、テイク7に移行。これはオフィシャルの前半に使用されたテイクで、オフィシャルではカットされた部分まで聴ける。続いてテンポ・アップされオーケストラが入ったテイク26がオリジナルのスピードで流される。
19. ア・デイ・イン・ザ・ライフ・・・ジョンのカウントから始まるヴァージョン。テイクはオフィシャルと同じ。
20. ハロー・グッバイ・・・基本的にはオフィシャルと同テイク。
21. レディ・マドンナ・・・オフィシャルと同じテイクだが、ベーシックのみでブラス・セクションがまだ入っていない。ショート・ヴァージョンに編集され、出だしのヴォーカルのみ『アンソロジー』にも入っていた、ポールがふざけて歌うトラックに差し替えられている。
22. ヘイ・ジュード・・・オフィシャルとは異なるテイク9を編集したもの。このレコーディング風景はフィルムに残されており、画面ではそれが使われた。
23. ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス・・・ジョージによるデモ・テイクだが、『アンソロジー』のような編集がなされていない。
24. ビコーズ・・・ビートルズのコーラス部のみを抜き出したアカペラ状態で、途中から演奏が入るリミックスが施されている。
25. #9ドリーム・・・ご存知、ジョンのナンバーでオフィシャル・ヴァージョン。タイトル・バックに使われた。

以上だが、注目すべきはこのフィルムに使用されたオフィシャル・テイクでさえも、ほとんどがマスターからリミックスされたものであったということ。これには、ジョン・バレットのミックスがほぼ使われていた。

 さて、こうして公開されたジョン・バレットによる、ビートルズ未発表音源ですが、やがてこれが幻のアルバム『セッションズ』に繋がって行く。