
(ドイツでリリースされたシングル『ミッシェル/ガール』のジャケット)
ビートルズはデビュー以来、アルバムに必ずポールの歌うバラード・ナンバーを収録していて、それがアルバムの売りの一つになっていました。例えば『Please Please Me』では「A Taste Of Honey」、『With The Beatles』では「Till There Was You」、『A Hard Day’s Night』では「And I Love Her」、『Beatles For Sale』では「I’ll Follow The Sun」、『Help!』では「Yesterday」、そして『Rubber Soul』では「Michelle」という訳でした。このスタイルは、これ以降の作品でも堅持されていくことになります。
特にアルバム『Help!』に収録された「Yesterday」が本国イギリスではシングル・カットさえされませんでしたが、アメリカではシングルとしてリリースされ、ビルボード・シングル・チャートで4週連続1位を獲得し、大きな話題となりました。その後を受けて『Rubber Soul』でもポールのバラードにも注目が集まったものでした。そしてポールが送り出してきたのがこの「Michelle」です。「And I Love Her」をレコーディングしたのは1964年であり、その翌年の「Michelle」は、わずか一年の間に作曲能力・編曲能力が、ともに目覚ましい進歩を遂げたのを手に取る様に判る楽曲でした。
この曲でまず気付くことが、フランス語を一部使っていることでも判る様に、シャンソンの要素を取入れていることです。そのコード進行にも著しい進歩の跡が見られ、ビートルズの急激な進化を象徴しているかのようでした。まずは冒頭で登場する、主音から半音ずつ下がっていく「クリシェ」と呼ばれる手法をイントロを採用しています。この時のキーはFマイナー。しかし歌に入るとFメジャーに転調します。そしてその一小節後にはFマイナーのダイアトニック・スケールに転調しているのです。その主旋律にも工夫が見られ、ディミニッシュ・コードを上手く使ったメロディ・ラインが秀逸です。
メジャー・キーで始まった曲が途中で、同主調のマイナーに転調するというこの手法は、この後ポールによって何度か使われることになります。例えば「Penny Lane」、「Fixing A Hole」などがそれです。しかし、それにも増してこの「Michelle」のコード進行の複雑さは並外れていますが、ポールは恐らくある程度のコードの進行の大枠を決めた後、メロディを優先してコードを決めていったものと思われます。といのもこのアコースティック・ギターは、ポール自身が弾いていますので。
この続きはまた明日に。