
今日は『アビイロード』の最後の曲「The End」のお話。
この曲は当初より、メドレーの最後の締めくくりとして作られましたが、疑問に思っていた事が一つありました。私事になりますが、数年前の事、『アビイロード』の最後のメドレー「Golden Slumbers ~ Carry That Weight ~ The End」を友人のバンドでカバーし、そのギターを私が弾くことになったので、ならばフルコピーしてみようかと挑戦しました。ギターソロ自体はそれほど難しくなかったので、コピーできました。そしてそのままビートルズのCDに合わせて弾いていると、ソロのあと「And in the end・・」という歌詞が歌われる部分になると、どうしてもキーが合わないのです。調べてみると、ギターソロが終った後のピアノから、クォーター・トーン(半音のまた半分)ほどキーが高いのです。
これの最も簡単な解釈は、ピアノの部分から別にレコーディングしたのではないか、というもの。そこでマーク・ルイソン著『The Complete Beatles Recording Sessions』で確認してみたのですが、ビートルズによるレコーディングは1969年7月23日にバックトラックが完成しており、後にヴォーカル、ベースとオーケストラのオーバーダビング作業が加えられます。しかし、ここで重要なポイントは、オーケストラもピッチが変わっているということ。そしてオーケストラのオーバーダビングは、同年8月15日の一日のみ。同日にピッチを変えてオーケストラのオーバーダビング作業を行うことはまず考えられません。従って、これは恐らくマスターテープを編集して、ピアノの部分からピッチを上げたという結論に達します。では何故この作業が為されたのでしょう。
それを解く鍵は1969年という時代にあると思われます。これ以降は私の推論ですが、当時の録音媒体の問題が関わっていると思っています。つまりLPレコードの性能そのものにその原因があったのです。現在ではCDも技術進歩により収録時間が80分を越えたものも出てきましたが、LPフォーマットの時代は、どれほど無理をしても60分程度が限界であり、しかもその場合著しく音質が落ちるという悩みもありました。と言うのも、レコードの溝の幅を圧縮して無理矢理、収録時間を延ばしているため、特にレコード溝の幅を必要とする低音部分が低減されるという結果を招きます。そこで当時は、LPレコードの収録時間は45分程度に収める事が通例でした。
振り返って『Abbey Road』のサウンドを確認してみると、ビートルズの他のアルバムと比較してもダイナミック・レンジが広く、低音部も比較的ラウドに録られています。そして全体の収録時間は、44分30秒前後と彼らのアルバムにしても長めであることが判ります。もう一つ、同年8月25日にマスターテープの時間を短縮する作業が行なわれてているのです。ここで行われたのが、「Maxwell’s Silver Hammer」のイントロを削って歌から始まるようにして7秒短縮し、「The End」の編集により36秒を短縮しているのです。『Abbey Road』を良い音でLPに収めるため、マスターテープを45分以内に編集し直したのでしょう。その短縮作業の一貫として、このラストのテープ・スピードを変えたのだと思われます。
この続きはまた明日。