生きる気力を失った米軍兵士の前に突然現れた小さな子猫。生きる手助けを終えた後虹の橋へ(アメリカ)
偶然出会った1匹の子猫に、命と人生を救われたというアメリカの元軍人のエピソードが話題になっている。
戦場で心身に深い傷を負い、PTSDとなり絶望から命を絶とうとしていたジョシュ・マリーノのもとに突然現れた小さな猫。
スカウトと名付けられたその子猫は、ジョシュに生きる希望を与え続けた。一時行方不明になるも、奇跡の再会を遂げ、ジョシュを励ました。
子猫の支えで社会復帰も果たし結婚することとなったジョシュ。それをすべて見届けた子猫は天に旅立っていったのだ.
Josh & Scout, a Mutual Rescue™ Film
戦場で体と心に傷を負った軍人
これは、ジョシュ・マリーノが体験したスカウトとの思い出をMutual Rescueという非営利団体がYoutubeやフェイスブックで今年5月に公開したものだ。
ジョシュ・マリーノは元軍人だ。かつて米軍に入隊したての頃、ジョシュは母国の旗がついた軍服に袖を通し、国に尽くすことを誇りを持っていた。
スカウトに会う前のジョシュ
だが彼はその後、戦地で恐ろしい体験を味わうことになった。
バグダッドに派遣されたジョシュは、ある日至近距離で受けた迫撃砲の影響で脳の一部を損傷し、PTSDにも悩まされるようになった。
戦地から帰還した彼は深刻な傷とPTSDに苦しみ続けた。戦場で負った見えない傷で物事への集中力をも失ったジョシュは、日常生活をまともに送ることができなくなっていた。
自らの命を絶とうとしたその時、子猫が現れた
そしてある雨の日、ジョシュは限界を迎えた。もう耐えられなかった。暗い部屋で手持ちのナイフの中から1本を取り出した後、パソコンに遺書をしたためて外に出た。
雨に濡れながら階段に座り、最後の煙草に火をつけて心の中でつぶやく。 「・・これですべて終わりにしよう」
と、その時。彼の耳にかすかな猫の鳴き声が飛び込んできた。
ふと目をやると茂みから黒と白のオスの子猫がぶらりと歩み寄ってきた。驚いている彼の足に体をすりつけるとなでて欲しそうに彼を見た。
そうか、この子猫は知ってるんだな。どうにもできなくなった自分のことを知ってて、それでも励ましてくれてるんだ・・・。
その瞬間、こらえきれなかった想いが一気にあふれてジョシュは号泣した。こんな自分をまだ必要とする存在がいる・・そう思うと涙が止まらなかった。
子猫との出会いで希望が生まれたジョシュだったが・・
それからというもの、ジョシュは自分が抱えている問題に頭を悩ますのを一時中断し、外で待つ子猫の世話を始めた。
ツナ缶や軍で配られる食事をやってかわいがっているうち、子猫も彼の声を覚えてくれた。
そうこうしているうちに、ジョシュは外に出るのが楽しみになった。子猫が彼に希望を与えたのだ。
子猫はジョシュから何かを奪ったりはしないし、ジョシュが抱える傷や欠点も見ない。それが彼を安心させた。
しかしある日のこと、子猫が姿を見せなくなってしまった。突然の別れにジョシュはひどく意気消沈して荒れた。
ジョシュはそこであることに気づく。
自分が子猫を助けてたんじゃなく、実は自分も子猫に助けられてたんだな・・と。ジョシュはそこでいろんなことが見えてきた。
それ以後、彼は消えた子猫との出会いに感謝し、会えないことをさびしく思いながらも、自分の面倒を見てくれていた周囲の人々にも感謝するようになった。
偶然立ち寄ったイベントで奇跡の再会を果たす
それからしばらくして、ジョシュはベッキーという同郷の女性とつきあい始めた。そしてある日、彼女と保護動物の里親探しのイベントに立ち寄り、ケージが積まれた施設の中に入った。
するとジョシュの身に信じられないことが起きた。
ケージから何かがジョシュの左腕を何かがつかみ、彼を立ち止まらせた。
とっさに驚いた彼がケージを覗き込むと、ずっとずっと会いたかったあの白黒の子猫がいたのだ!
彼は即座に子猫を出してぎゅっと抱きしめた。すぐに手続きを済ますと自宅に連れていきスカウトと名づけて共に幸せに暮らした。
それから1年後、ジョシュはベッキーと結婚し、彼女の3匹の猫も家族に迎えてにぎやかに過ごし始めた。
スカウトに励まされ社会復帰。だが悲しい異変が・・
新しい家族とスカウトに見守られながらジョシュは日常をとりもどした。自転車に乗り、食事にも気を配り、いろんなことに取り組んだ。
学校にもどり、修士の学位やリハビリとメンタルヘルスのカウンセリングの資格も取り、同じような経験をした退役軍人のために働けるようになった。
しかし、そんなある日のこと、スカウトの体調にある悲しい異変が見つかった。
だるそうにし始めたスカウトに気づいたジョシュとベッキーがすぐに獣医に連れていくと、猫の白血病だったことが判明した。
大好きなスカウトがジョシュに教えてくれたこと
すぐに獣医に輸血などの治療を施してもらい、懸命に夫婦で見守り看病していたものの、スカウトは2週間後の夜に呼吸困難に陥いり、急きょ獣医のもとに向かう途中、ジョシュの腕の中で旅立ってしまった。
その時のつらい別れの記憶は今もジョシュの胸を激しく締めつける。
当時を振り返り、苦しそうに声を震わせるジョシュ
在りし日のスカウト
心を損ねていたジョシュにいろんな気づきやチャンスを与えてくれたスカウト。ジョシュは今でもこの奇跡のような出来事を思わずにはいられない。
スカウトは私の猫になる前から私をよく知っていて、命を救ってくれました。そして私を別な道に導き、すべての逆境から立ち直る自信を与えてくれたんです。
もうジョシュは自分に見切りをつけたりはしない。全てをあきらめかけた自分を救ってくれたスカウトに感謝し、楽しかった彼との日々を胸に大切な家族と支え合いながら、前を向いて生きていく。
via:lifewithcats / consciouscat / facebookなど / translated by D/ edited by parumo