サンドスタチンを点滴に入れて吐き気は少しマシになったように思いましたが、すぐに元の木阿弥となりました。
食べない、飲まないのに一体何が出てきていたのか?
唾液です。
普通の人は1日に1〜1.5リッターの唾液が分泌されるそうです。
夫の場合、それが全て嘔吐物となって出てくるのです。
なので夫の吐いたものは透明な唾液と胃液ばかりでした。
だいたい1時間に1回の苦しみの嘔吐です。
この嘔吐のせいで夫の体力は毎日ごっそり持っていかれました。
そして8月のこの頃には次第に黒い血のようなものが混じるようになるのです。
「・・血かな?」
「・・血のようですな」
血が混じらない時もあり、せめて視覚から弱っていかないように、
「血よ、今回は出ないで!」
と夫の背中をさすりながら嘔吐物を凝視していた毎日でした。
2021年8月中旬
義兄に連れて行ってもらう通院の日です。
もう抗がん剤治療どころではなく、夫はまたもやそのまま入院してしまいました。
やはり黄疸が進んでおり、その日のうちに胆管ドレナージをすることになりました。
内臓に直接チューブを挿して、排液パックに胆汁を出していくのです。
ただ、これはただの対処療法です。
「これで黄疸は解消するよ」
「でもガンが増大しているねぇ」
義兄が聞いたスーパードクターの言葉です。
入院して2日目、反応がなかった夫から電話がありました。
やっと身体が楽になった、と。
良かった