73yb55eのブログ

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精神疾患者の愉快な毎日をお届けします!最近は資格の勉強をしています。

あ!これは⤵何かというと私が書いた小説の挿絵だよー。



コンペイトウを薬に見立てているみたいな



小説の⤵



「この薬を飲むと、眠る前みたいな、夢の入り口みたいな、まとまりのない思考回路がずっと続くのよ」
 
咲夜から渡された星形の薬を飲んだ。
 
それは昨日の午後11時の話。
 
会社の昼休みに私の机に来た彼女はもじもじしながら柔らかい茶髪を耳にかけ、薄ピンクの唇を小さく動かして、袋に入ったそれを私にくれた。
 
それが昨日の午後1時頃。
 
その日も夢の断片のような色、音、イメージが頭の中を駆け巡り、加えて重さのある憂鬱感にどっぷりと浸かったまま
 
深い眠りに落ちていった。
 
眠りにつく前にとりとめのない考え事をすることはいつものことだから、それが薬の影響か分からない。
 
目覚まし時計の音に起こされ、仕事に行く準備をしなくちゃ、とベッドの上で両腕を上げて体を伸ばした。
 
午前7時。
 
目が覚めた時から違和感を覚えていた。
 
水の中から抜け出したときのように体が重たい。
 
どうにか洗顔をして着替えたが朝食をとる気が全くせず、仕事に行くのも億劫だ。
 
夜飲んだ薬のせいだろうか。
 
黒のパンプスに足を無理やり押し込んで玄関前の鏡に映る自分を見たら顔色が悪くてぎょっとした。
 
通勤電車までの道のりをかなり長く感じてしまう。
 
道行く人々は私同様青ざめた顔をしている。
 
幼稚園児を引っ張って歩く近所のお母さん、腕時計を確認し駆け足で行くサラリーマン、リュックサックを載せた自転車を漕ぐ学生、等々。
 
外は曇り空で今にも雨が降り出しそうな悪天候。
 
私は訳もなくこの空と同様泣きたい気分になってくる。
 
心臓は鷲掴みにされているように苦しく拍動し、息切れと眩暈、浮遊感。
 
目に見える景色はすべてカラーがグレー。
 
色を失い憂鬱さと倦怠感が漂う。
 
現実が現実じゃないみたいな、まるで悪夢の世界に入り込んでしまったみたいな……。
 
不思議の国のアリスの現代ホラー版かしら、なんてことを考えながら次の電車を待っていると
 
「ここにいてはいけない」
 
と私の中の誰かが叫んだ。
 
仕事をしてはいけない、会社に行ってはいけない。
 
なぜ?という疑問の言葉は虚空にかき消え、そうだ、私は仕事で大変なミスをしてしまったのだからと別の誰かが言う。
 
重大な出来事を思い出す私。
 
心臓はますます急スピードで血液を体内に送り出す。
 
焦燥感に駆られ今来た道を逆方向に突然走り出した。
 
荷物をまとめて逃げ出さなければ。
 
早く、ここから。
 
私は大慌てで家の玄関に突っ込み片方の靴だけを脱いだまま部屋の中へ入り咲夜からもらった薬をバッグに詰めた。
 
部屋に残しておくと危険な気がしたからだ。
 
仕事着を脱いでくすんだピンクのワンピースを着た。
 
曇り空に映えそうな気がしたから。
 
プライベート用のバッグを手に紺のパンプスに履き替え歩く。
 
救急車のサイレンがどこかで鳴っているのがやけに耳障りに聞こえる。
 
いつの間にか大きな橋の上に来ていた。
 
「橋の上から飛び降りろ」
 
私の中の誰かがひどく高圧的な態度で命令する。
 
冷や汗が背中を伝っていく。
 
言われるままに橋の欄干に手を置き身を乗り出そうとしたとき、
 
「藤野さん」
 
カツカツとヒールの高い音が徐々に自分に近づいてくる。
 
この甘ったるい声には聞き覚えがある。
 
咲夜だと思った。
 
私は彼女の方を振り向くと、
 
「昨日の薬、あれはどこで手に入れたものですか。あれを飲んでから私……」
 
引き攣った笑いの私を幼い澄んだ瞳で覗き込むようにして
 
「近所のスーパーで。知らないの?コンペイトウ」
 
物語のオチのような話を聞く私の頭に疑問が湧いてくる。
 
彼女はそもそもなぜここにいるのだろうか。
 
「仕事はどうしたんですか?会社は?」
 
最後まで言い終わらないうちに、取ってつけたような笑いを浮かべたその顔が次第に私から遠ざかっていく。
 
輪郭はぼやけ、澄んだ瞳も薄いピンクの唇もスカートもハイヒールも消滅しかかっていた。
 
それでは彼女までが私の空想の産物であることを認めさせることになってしまう。
 
消えさせてたまるかと私は手を伸ばすが彼女の胸のあたりを突き破りなんの手応えも感じないばかりか、ますます存在が薄くなりついには何も見えなくなった。
 
さっきまでほとんど無音だった自動車の走る音が大音量で耳元に聞こえてくる。
 
今にも落っこちてきそうなほど迫ってきている曇り空。
 
色を失い憂鬱さと倦怠感が漂う世界。
 
私は橋の上に腰を下ろして脚を投げ出し髪の毛をぐしゃぐしゃとかき乱す。
 
途方に暮れて泣き出しそうな私。
 
上空の方からそれを見ている誰か。
 
覗き込んでいる。
 
こっちを見ている。
 
幼い澄んだ瞳……。
 
「藤野さん」
 
私は会社の自分の机で咲夜を見上げていた。
 
「コンペイトウはおいしかった?」
 
星形の粒が入った袋を握りピンクの可愛らしい唇を魅力的に動かして女性らしい笑みを浮かべる。
 
窓の外は清々しい青空で雲一つ見当たらない。
 
光に満たされた室内。
 
午後1時。
 
「これって……」
 
咲夜に疑問を投げかける私。
 
「これって本当にコンペイトウなんですか?」
 
彼女は柔らかい茶髪を耳にかけ長いまつげで縁取られている目をぱちぱち動かした後、
 
にっこり微笑んだ。



なんか投稿したあとで気になることが多いよー。