皆様､こんばんは｡

休み二日目の夜中ですが､昨日の記事にも書いた通り明日から勤務時間変更により出勤時間がこれ迄より3時間遅くなる為睡眠時間の調整が必要…明け方近くに就寝する予定です｡これが冬期真っ只中であればかなり辛いですがこの時期は然程寒い思いはしませんし元々夜の方が強い体質かつ夜更かしは大好きですので…この後は好きな作品をつまみに飲酒です｡

さて本日は未DVD化かつ本日時点で有料動画配信が行われているのはU-NEXT内(見放題対象作品)のみですが､名画座での公開及び東映ch等々の有料波での放映は時折実施されており､先月もに日本映画専門ch内に於いて｢藤純子(現･富司純子)のデビュー作｣として放映されました｡因みに｢千葉真一の時代劇初出演作｣でもあります｡

｢八州遊侠伝･男の盃｣昭和38年6月30日公開･直居欽哉/山崎大助の共同脚本･マキノ雅弘監督･東映京都制作｡

八州遊侠伝　男の盃 - 作品情報・映画レビュー -KINENOTE（キネノート）「八州遊侠伝　男の盃」の解説、あらすじ、評点、5件の映画レビュー、予告編動画をチェック！あなたの鑑賞記録も登録できます。 - 「人生劇場　飛車角」の直居欽哉と「向う見ずの喧嘩笠」の山崎大助が共同で脚本を執筆、「いれずみ半太郎」のマキノ雅弘が監督した股旅もの。撮影は「変幻紫頭巾」の三木滋人。

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国定忠治処刑の噂が流れて約一年が経過した上州の或る温泉街の宿に片岡千恵蔵が現れます｡因みにその宿にはこの地の祭りの利権と志村喬が所持する十手の権利を得ようと画策し実行しつつあった原健策が子分達及び用心棒と共に長逗留中でした｡｢この地に限って堅気を虐める事は絶対に無い!｣と信じて行商に遣って来た田中春男等々の露天商達を虐め､大金をチラつかせて十手の権利を志村さんから得ようとしたが為に息子の千葉真一は目が眩み､千恵蔵御大が逗留中の宿の女将は原さんが債務の権利を買い取った為に今後どん底に墜ちる事確実であった為に実娘の藤純子は｢原さん達を退治してくれ!｣と無法者に一歩も引けを取らぬ千恵蔵御大の態度を見て懇願する程…その一方でこの宿に親子で住み込む女中の長男と過ごす一時は千恵蔵御大に取って憩いの時間であり､コマを作ってあげる約束をしたり雀採りに付き合ったりと云う関係に｡しかしそんな姿を目にしていた志村さんは｢処刑された筈の忠治によく似ているが…｣と疑問を抱いた上に､千恵蔵御大が自宅を訪れた際に過去の行為に対する後悔の念を口にし始め…

｢弱きを助け強気を挫く｣これだけの内容の作品であれば無数に存在していますが､当作品は｢千恵蔵御大が本当に処刑された筈の忠治なのか?｣｢得体の知れぬ水島道太郎は千恵蔵御大側?原さん側?体制側?｣｢志村さん･千恵蔵御大の二人芝居の場面の素晴らしさ｡ここで志村さん･千恵蔵御大･千葉ちゃんの関係性等々が語られる上にそしてその場面こそが当作最大の見せ所｣｢金銭では手に出来ぬ価値観と温もりを子供に改めて教えられ思い起こした事がその後の物語の主線の一つとなる展開｣｢町人達に信頼され愛された筋金入りの侠客がこの世から消えようとも次々に同じ志を持った者が現れ綱紀粛正が繰り返され世の中は均衡を保って行ける現実｣等々､幾ら純子姐御が可愛かろうと､アクションで鍛えた身体が太鼓叩きにも役に立ったのかと感じる千葉ちゃんの力演があろうと､内容とベテラン名優が織りなす芝居により先述の二つを完全に吹き飛ばしてしまう佳作!そして｢男の盃の題目が持つ意味の重さ=血縁･信頼･過去等々を天秤にかけられぬ程に至った時､心の中に盃が宿るモノ｣と教えてくれる辺りは日本男児の本筋かつ目指すべき道をしっかりと示していますし､生前の鶴田浩二が語られた｢任侠道とは人間が守るべき正常な精神そのもの｡人が人に対して思い遣る心を持つ･人との義理や契約を守る･先輩に対して礼を尽くす･人が人を裏切らない･正邪をを賢く見極める｣を解り易く伝えているかの様にも感じた次第。

昭和38年と云えば東映東京がこの年の三月に｢人生劇場･飛車角｣を制作･公開し大ヒットとなり､これ迄は東映京都が東映を引っ張っていた展開がややもすると変わってしまう可能性さえ予感させた年｡映画の街である京都に在籍していた関係者は何があろうともそうはさせんと奔走･努力をされたでしょうし翌年｢博徒｣｢日本侠客伝｣等々に加え｢東映集団時代劇路線｣を確立し面目を保った…そんな過渡期･任侠映画路線の黎明期に制作された当作品は股旅物と云うよりも時代劇と任侠映画を見事に融合させ､より自然に次の段階に繋ぐ役割を果たしただけではなく新旧双方の観客の嗜好･志向等々を一つの作品で十二分に満たす内容を持たせた職人仕事そのもの!しかもべた付く様なしつこさとは皆無でサラリと高度経済成長期真っ只中の世の中が置き去りにしようとしていた古き良き物事を見直させようともした意図が感じられる点も良し!

忠治は処刑済の筈が…藤純子デビュー作/千葉真一初時代劇･東映京都｢八州遊侠伝･男の盃｣片岡千恵蔵