ナショナル・ストーリー・プロジェクト〈2〉 (新潮文庫)

¥620
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失業、戦争、身近な人の死。誰の身にも起こりえる、だが決して「普通」ではない瞬間。少女の日のできごと、戦時中の父の逸話、奇怪な夢と現実の符号。深刻だったり、たわいもなかったり、茫然とするほどの暗合に満ちていたり-無名の人々が記憶のなかに温めていた「実話」だけが持つ確かな手触りを、編者オースターが丁寧に掬いとる。無数の物語を編み上げた、胸を打つアメリカの声。
(裏表紙あらすじより抜粋)


先月を読みました。1も素敵だったけど、これも感慨深い本でした。
出たばかりのころはあったのにちょっと機を逃したらどこの本屋さんに行っても置いてなくて、捜すの苦労しました、2。
この苦労って、本当むなしいドラマがあるんですが、たいした話題じゃないんであえて書きません。


今回は『見知らぬ隣人』『戦争』『愛』『死』『夢』『瞑想』というセクションで区切られています。瞑想、っておもしろいですよね。精神的なお話が収録されていて興味深かったです。


この本から溢れだす、アメリカじゅうの奇跡のような出来事はそれだけで十分読み応えがあって素晴らしいんですが、立花は体験者の方がその出来事によって得た感想とか、考え方にとても惹かれました。


例えば、あるセールスマンは砂漠で車がエンストして困っていた旅行者を助け、一緒に連れていくことにします。しかし彼と過ごして三日目、セールスマンは突然発砲されます。旅行者は初めからセールスマンを殺して持ち物を奪うために接触してきたのでした。
セールスマンは4発銃で撃たれますが、なぜか死なず、怯える旅行者をよそに冷静であり続けます。セールスマンは根気強く旅行者を説得し、互いが互いを逃がし、このことは誰にも、警察にも一切言わない、旅行者に対してはもう二度とこんなことをしないこと、という約束をして、握手で別れ病院で治療を受けることができました。
旅行者が撃った銃弾は4発のうち当たったのは2発で、どちらも頭蓋骨をかすめていたそうです。
で、それに対してのセールスマンの感想が、「自分は幸運だ、神の恵みを一身に受けている。自分は約束を守った。彼も守ってくれたと思いたい。」


のっぴきならぬ心の広さです。


また、7歳の男の子はとてもとても美人な初めての恋人に運動場で拾ったバッジを愛の印として捧げます。すっかり感じ入った様子の彼女はプレゼントを受けとり、おごそかな口調でささやきました。「私に恋人になってほしかったら、これからは見つけたものを全部ちょうだい」
じっくり考えるうちに、彼女への思いは次第に萎えていったそうです。せめて50パーセントを請求されていたら二人は一緒にいられたかもしれない。
彼は彼女に、愛と経済学の均衡における、抜き差しならぬ釣りあいを教えてくれたと感謝しています。そして今も時おりうとうとと寝入りながら校庭で彼女を追いかけ、その黒い、踊る巻き毛をつかもうとしている、と。


いろんな出来事があり、それによって感じることは一人一人違います。
「普通」の人なんていませんね。みんながみんな残らず個性的です。
今回も楽しい本でした。