塩谷和夫の椅子は、カウンセラーの椅子と向かい合う形で配置されていた。彼の椅子の後ろには、部屋を暖かく照らすフロアランプが置かれていた。
「そんなことないよ。パチンコをやめられるし、俺がやめたいときにはやめられる」木村の批判的ではない解説は和夫には響かなかった
「本当にそうでしょうか。パチンコ依存症は、「コントロールの障害」なんです。やめたくても本人の意思ではコントロールできなくなり、止めると進行は止まりますが、以前のコントロールは戻ってこないのです」
「俺は自分の意志でコントロールできてると思ってるよ」
「この障害はパチンコへの歯止めがゆるくなり、放置すると徐々に進行する病気です。これが進行すると、[今日は2時間まで]と思っていても、適度に済ませることができなくなります」
「それはあくまで一部の人の話で、俺は時間を管理できてると思うよ」和夫は自分の時間管理には関心がなかった
「パチンコを止めようとすると、不安や落ち着かないような身体的症状が現れます。楽しんで打っているように見えても、パチンコを止めることができない深刻な状況にあるのです」
俺はパチンコ依存症とは思わない、楽しんでいると和夫は繰り返したが、自分がパチンコに依存している可能性をほんの少し認識した