カウンセラーの木村は塩谷和夫の生活状況を尋ねた

「それは塩谷さんの感じ方かもしれません。しかし、塩谷さんにご家族はありますか、ご友人は、お仕事は、他に趣味はありますか、パチンコ以外に塩谷さんの生活に何があると思いますか」

「家族はいません。友人はいますがパチンコ仲間だけです。仕事はありません。パチンコは趣味で、楽しいからやってるだけです。」和夫は趣味として正当化しようとした

「それでは、塩谷さんの人生はパチンコにコントロールされていると言えるかもしれません。パチンコがあなたの人生を狭めているのではないでしょうか」

「パチンコは俺を満たしてくれる」和夫はパチンコにブレーキがかけられると信じていた

「そうですか。でも、塩谷さんがパチンコに行くことを、周りの人に話したり、自分で認めたりするのは難しいと感じませんか」木村はパチンコ依存症の特性と進行について説明し始めた

「別に難しくない。ただ、依存症だとか言われるのは嫌だから、あまり話さない」
「なぜ、パチンコ依存症だと言われるのが嫌なのですか」

「だって、俺はパチンコ依存症じゃない。パチンコは趣味で楽しんでるだけだし、自分でコントロールできてるはずだ」和夫には依存症というものが社会的によくないイメージがあった

「塩谷さんはパチンコ依存症ではないと思っていますが、実はパチンコ依存症に陥る可能性は、誰にでもあるんです。特に、塩谷さんのように、週に3回以上パチンコ店に足を運ぶような頻繁なパチンコ訪問をしていたり、月に10万円以上の金額をパチンコに使ってしまうような高額の支出をしていたり、生活に支障をきたすような行動が見られる場合は、周囲に打ち明けたり、依存症を直視したりすることが困難になっていることが多いです。これらはパチンコ依存症の前兆と言えます」