学生、が終わった。
名前や分類が変わっていっただけで、生まれてから今までずっと学生だった。
だから、これからどうしていけばいいのか見当もつかない。
永遠に学生でいたかった。
自由で、気軽で、思いつきだけで行動できて、だけど堕落しきったこの日常が私は大好きだった。
これから、今まで遊んできたぶんのツケを返し続けなければならないのか。
どうして働かなければならないんだろう。なにに追われているのだろう。
なんのために働くのか。生きるためというならば、私はなんのために生きるのか。麻薬的な一時の幸福感のために、長い間辛い思いを積み重ねなければならないのなら、私はそんなものいらない。
 
みんなばらばらになってしまった。
なにも考えずに連絡取れる人はもともと一握りだったのに、その数少ない人たちも私とは違う立場に立とうとしている。
仕方ないことだし、あちらから見れば私もその一員なんだろうけど。
学生最後の日を、私は一人で過ごした。
周りの人だって研修やらなんやらで一人で過ごしている。私だけがわがまま言うわけにはいかない。それに私は今日一人になるのが嫌なだけで、学生最後という事実からさみしさから辛さから目を背ける道具として誰かを利用したいだけで、なんなら自分が分裂して話し相手になってくれるならそれでいいわけで、そんな身勝手な理由で人を呼びたてることはできない。
ただやっぱりさみしかった。
学生最後の夕焼けを一人でみたら、涙が出た。
 
夕焼け。
小学生のときは帰る合図で、中学では部活の残滓が溶ける時間で、高校では授業終わりの雑多な時間で、大学では…わからない。授業中だったり、放課後だったり、はたまた昼寝から目覚める時間だったりした。
夕焼けはいつもきれいで、ずっと変わらない、ように思う。ここと故郷を、今と過去を繋げてくれる。昼の残り香と夜の気配が混じり合う夕焼けの匂いが好きだ。
 
現実は冷たい。
誰かと心を寄せ合って生きていきたいと素直に思う。
小さい頃に読んだ、宇宙のみなしごを思い出す。
自分で頑張って光らないと闇に飲み込まれてしまうから、でも厳しい現実に立ち向かうのは時々辛くなってしまうから、だから手を取り合って屋根の上で夜空を見ようと彼らは言っていた。
私と屋根に登ってくれる人はいるのだろうか。
それとも、一人で手をあたためる術を身につけるべきなのだろうか。
 
22年は早かった。
特に大学なんて何をしていたのか思い出せないほど。
もう取り返しのつかない地点まできてしまった。
なにを求められているのかがわからない。意味がどこにあるのかも。
ただ、頑張らなくてはならないことだけはわかる。いろんなものを犠牲にして私は今ここに立っている。後悔するわけにはいかない。
 
ああ、日付が変わった。