【Corey】桃太郎に似た話。その4 | ライオンは外出がきらいおん!

 突然の邂逅。



 おじいさんは身構え、犬はぐるる……と犬っぽく唸ったりしてみます。



「う、うきっ……?」



 猿でした。

 ええ、あれに見えるは紛れもない猿です。赤褐色の体毛に覆われ、顔と臀部は丸裸であり、なんにせよ「うきっ」と鳴いたのです。これを猿と呼ばすして、なんと呼称するのか。



「おお、なんだ……猿か」

「うきっ」



 ほっと胸をなで下ろしたおじいさん。

 猿は何も考えていない様子で、尻をぼりぼりと掻いている。傍目では間抜けな様子だ。



「あの……猿、ですよね?」

「……うき?」



 おじいさんと犬は顔を見合わせる。



「あれ、猿は喋らないのか?」

「その様ワンね」

「なんで犬が喋れて、猿が喋れないんだ」

「……それは、言外に『犬は猿より、知能が低い所詮四足歩行の犬畜生で、どう足掻いても類人猿や霊長類には遠く及ばない、家畜がお似合いのペット風情』という意味が込められてるワンか?」

「深読みしすぎだろ」

「……そう聞こえたワンよ」

「考えすぎだ……とにかく」



 おじいさんは懐から、きび団子……じゃなかった。よもぎ団子を取り出し、猿の前に差し出してみる。

 いくら、喋れないとはいえ、猿を仲間にしておいて損することはあるまい。

 そんな損得勘定丸出しの、思考回路のおじいさんは仲間に出来ないだろうか、とダメ元で猿によもぎ団子をプレゼントフォー・ユー。



「……うき」



 猿は、少し警戒する様子を見せたが、匂いを嗅いだ後、おじいさんの手からよもぎ団子を受け取り、口に放り込む。しばらくしてゴクリと嚥下(えんか)。



「……これは仲間になったという認識でいいのかワン?」

「いや、どうなんだろう。コミュニケーションが取れないからわからないな」

「でも、団子食ったら仲間になるっていうテンプレがあるだろ」

「……そういう小説内世界観を崩す発言は控えてくれないか」



 やれやれといった様子のおじいさんを傍目に、猿は可愛らしく首をかしげて鳴いてみせる。



「うき?」

「いや、うき?じゃなくてさ……犬、お前サル語とか喋れないのか」

「出来るわけないワン。言語は犬語と日本語とアゼルバイジャン語しか話せないワン」

「最後、一体どこの国の言語なんだよ……皆目見当もつかんわ」

「犬なのに、三ヶ国語喋れるバイリンガルなんだワンよ?凄くないかワン?」

「犬語を、一つとして捉えていいのか難しいな」

「……どうするワン?」

「そうだなぁ」



 うーんと、腕組みをして考え込むおじいさん。



「まあ、とにかく先に進もうか」



      *



 おじいさん一行は、何食わぬ顔でその場を後にする。

 気になる猿の様子はというと。



「……なぁ、犬」

「……なんだワン?」

「猿……ついてきてるな」

「あ、あぁ……どうやら仲間になったという認識でいいようだワン」



 おじいさん達の歩く、数メートル後方。

 決して、それ以上は近づこうとはしないが、マイペースな歩みで猿は確実におじいさん一行の後をつけてきている。



 仲間になったのか、それともただ単に「まだ団子貰えるかも」という食欲の赴くままに欲望全開ストーカー行為なのか。

 その判断は、猿本人にしかわからないのだが、多分前者だろう……というか前者であって欲しい、という望みのおじいさん。



「と、ともかく心強い仲間がついたじゃないか」

「喋れないのがネックだだけどね……あぁ、ワン」

「お前、語尾めんどくさくなってきてるだろ」




【その5に続く】