小さなことだと思っていた。
母に裏切られたこと。
優しい嘘をつかれること。
これは、小さなことだと思っていた。
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トラウマセラピーでも、カウンセラーさんと取り組んで、裏切りのトラウマは、とても軽くなっていた。
だけど、時折、顔を出してくる。
まだ、完全には癒えていない傷。
癒えきれないことが、もどかしくて、たまらなかった。
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普段、私は母と、とても仲が良い。
温泉に行ったり、一緒に料理をしたり、公園に行ったり。
母の強さ、優しさ、明るさ、懐の深さ、寛大さが好き。
大好きだから、嘘をつかれると、傷が余計に深くなってしまう。
その嘘は、ほんの些細な、ちっぽけ過ぎる、可愛い嘘だったとしても。
私は、傷ついてしまう。
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クリスマス。
何気ない会話の中で。
私 「あれ？昨日、言ったよね？」
母 「ああ、そうだっけ？」
次の日。
私 「あれ？お母さん、忘れた？」
母 「え？あー、ごめんね。お母さん、忘れっちゃった。」
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こんなことは、今まで無かった。
普段、人のはなしをあまり、聞いていない母ではあったが、
何日も連続して、小さなことを忘れている。
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単なる、もの忘れ、であってほしい。
歳のせいで、もの忘れが増えた、そうであってほしい。
いつもの手作りのエプロンをしている母が
「忘れちゃって、ごめんね。」って謝る姿が
すごくすごく、か弱く見えて
もう、高校生の時に裏切られたことを
本当に
「許してあげたい。」
「手放していい。」
というものが
心の内から湧いてきた。
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自分も、相手も、
「許そう。」
「許します。」
ずっと、そんなことに取り組んできて
だけど
うまく許すことが出来なかった。
今は、許す時が
天から与えられた感じがして
それに、ただただ身も心も委ねる。
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全部、なんとかしよう
コントロールしよう
そんな何十年の人生だった。
今年は
ただただ信じてみよう。
自分を。
何をやっても癒えることが無かった傷が
時を超えて癒える日がやってくるのだから。
時間はかかったとしても
気が遠くなるほど遠回りに見えるかもしれないけれど
「ありがとう。」
につながっている。
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