辰年。山鉾の龍の図柄 | コバやんの祇園祭レポート&雑記帳

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京都・祇園祭の山鉾町で生まれ育ったおっさんのブログです。

今年、平成24年は辰年です。年頭に当たって「龍」でスタートです。
 
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胴体は蛇、頭には鹿に似た角が2本あり、長いひげを生やし、背には81枚の硬い鱗をもち、四本の足にはそれぞれ3本の指と鋭い爪を備えた巨大な爬虫類のように描かれます。
古来鱗虫の長とされ、麟(りん)、鳳(ほう)、亀(き)とともに四瑞のひとつとして神霊視されてきました。
仏教では八大龍王の中で娑伽羅龍王が海や雨を司るとされ、航海の守護神や雨乞いの神として信仰されました。船首に龍が守り神として飾られていますね。
雷神とも関わりが深く、中空を飛行して雨や雲を起こしたり、稲妻を放つといわれます。
聖人が天子につくことや英雄の華やかな活躍のたとえに「龍、天に昇る」という言葉があり、龍の住処は龍宮とよばれ、龍神は乙姫と住んでいるといわれます。
一般に西欧の竜は悪神の化身のように考えられ、宝物を守っていますが最後に英雄や神々に殺される運命にありますが、東洋の龍は総じて現実生活に結びつき、人々に幸福を招来する善神とされています。
龍文(もん=模様)には、鱗のあるものを咬竜、翼を付けたものを応竜、角のあるものを虯(きゅう)竜、角がなく海の中に住むものを螭(ち)竜と呼ばれることもあります。
天子の象徴とされ、とくに5爪の龍文は天子に限り許された模様です。
わが国には古墳時代後期に大陸より伝来し、仏教関係の文様(=模様)として重用され、円形に表した団龍文、2頭の龍が向き合う双龍文、頭のみを表した龍頭文、雲を添えた雲龍文、虎との龍虎文、鳳凰との龍鳳文などがあります。
 
祇園祭の山鉾の懸装品には龍の図柄がふんだんに取り入れられています。
これは、水や雨など身近で必要なものを司ることから、安定した農耕と火災から守るために、また、八坂神社(祇園社)の本殿が龍神の池の上に建っていること、祇園社が京の都の青龍の位置にあること、お神輿を渡す神泉苑が都の龍脈(地下水流)の出口とされること、八坂神社本殿下の龍神の池が神泉苑の池と繋がっているといわれること、などが考えられます。
山鉾に取り入れられている龍の図柄で主なものは
 
長刀鉾(四条烏丸東入る)
前面の欄縁に竜。二番水引に方位四神(青龍)。イメージ 2
     見送に「雲龍波濤文綴織」
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郭巨山(四条西洞院東入)
  左胴掛に天明5年(1785)新調で円山応挙の師、石田幽汀下絵の「呉道子描龍図」。
  昭和56年(1981)新調見送の「昇り龍図」は皆川月華作の染彩。
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霰天神山(錦小路室町西入)
後掛に「雲龍宝尽蓬莱山図」
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蟷螂山(西洞院四条上ル)
御所車の轅(ながえ)の先に龍頭。
 
函谷鉾(四条烏丸西入)
  前後前掛に金糸団龍文。
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油天神山(油小路綾小路下ル)
二番水引に真向龍の金刺繍。前掛に波濤雲龍の錦織。
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鶏鉾(室町四条下ル)
上部4ヶ所の隅房金物に木彫龍金箔押し。
 
太子山(油小路仏光寺下る)
隅房金物に羽ばたく飛龍の立体的な彫り物。
    見送の上部に大きな真向きの五爪龍、下部に向き合う2頭の龍の綴錦。
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イメージ 29太子山見送(別物)
 
白楽天山(室町綾小路下る)
水引に「波濤雲龍図」
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木賊山(仏光寺油小路東入)
欄縁の中央に雲龍と神紋。
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月鉾(四条室町西入る)
欄縁に松村景文下絵の雲龍図。水引に四神青龍
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二番水引に角龍金糸刺繍。
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孟宗山(烏丸四条上ル)
  前掛に五爪の真向龍の雲龍文。
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山伏山(室町蛸薬師下ル) 
  前掛は五爪龍を4頭、二段に並べ、見送に五爪龍を3段に8頭描いています。
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菊水鉾(室町四条上ル)
天井幕に皆川月華の「雲龍図」。前掛は皆川月華の「昇り龍の図」
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伯牙山(綾小路 新町 西入)
  前掛に雲龍文。後掛に雲竜散らし文。
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芦刈山(綾小路西洞院西入)
古懸装品として、胴掛、見送に雲龍図。
 
保昌山(東洞院高辻下ル)
後掛は中央に龍、左右に岩と波が描かれています。
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放下鉾( 新町 四条上る)
天水引は雲に丸龍。
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下水引に栂尾高山寺の国宝「華厳宗祖師絵巻」で義湘の船に添って海を渡る龍。
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岩戸山( 新町 仏寺町下る)
欄縁は龍。水引に団龍文。見送に「日月龍百人唐子喜遊図」
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船鉾( 新町 綾小路下る)
正面軒裏欄間に雲龍の高浮彫。
下水引は金地雲龍の厚肉入刺繍で、龍の眼には玻璃(はり)という宝石。
舳先の前掛は山鹿清華作の鶴と龍と岩波の綴錦。
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艫の櫓の欄縁部には金色の飛龍の彫刻が7頭。
櫓下の見送は昇り龍と青海波の綴錦。
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大きな漆塗の舵の左舷には下向きの、右舷には上を向く飛龍の螺鈿(らでん)。
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北観音山(新町六角上る)
 旧天水引は青龍の豪快な刺繍。

橋弁慶山(蛸薬師烏丸西入)
 下段の隅房金物に龍、虎、雀、亀の方位四神の肉彫。
 
鯉山(室町蛸薬師上る) 
重要文化財のタペストリーを分割して胴掛に中国製四爪龍が縫い合わせてある。
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八幡山(新町三条上る)
  胴掛に「昇龍綴織三枚繋ぎ、左右雲龍唐花金襴」。
  見送に「雲龍波涛図刺繍」を所有。

鈴鹿山(烏丸三条上る)
  見送に中国明代の雲龍図を所有。
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役行者山(室町三条上る)
  前掛の左右に「波涛飛龍図」
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  欄縁は雲龍の透かし彫。

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  胴掛に真向龍の左右に向き合う龍の綴錦。
  見送に「昇り龍図刺繍」を所有。
  隅房金物の胴掛部に十二支。
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黒主山(室町六角上る)
  前掛に五爪龍の「萬暦帝龍王図」。
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  隅房金物の水引部に方位四神の高浮彫。
 
浄妙山(六角烏丸西入) 
見送に珍しいかがり織の「五爪龍図」を所有。
 
南観音山(新町錦小路上る)
  軒裏の彫刻の後面に雲龍。天水引は方位四神ともう一つ五爪龍図があります。
  下水引の三番に雲龍文。
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  見送は中国明時代の五爪龍8頭の「鳳凰雲龍図」と、
     加山又造原画で龍の眼に人工宝石が埋め込まれた「龍王渡海」
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いろいろな「龍」がありますね。
辰年の今年の祇園祭ではこれらの龍にあやかってみられてはいかがでしょうか。