夕方、前の小窓をキィっと押すと

サラサラした涼しい風が、舞い込んできた




しばらく

机で読書を楽しんでいた、私は………





ホッと、一息………

外を眺めた






ここの空は、ホント好き






静かだな






風の、ふんわり優しい音まで

全てが、聞こえて来そう






地球の、音

太陽の陽射しのチリチリした音さえ

聞こえて来そうだ






目の前に

白い華奢な幹の白樺が、キラキラしている






お散歩しよう






家から出ると

先ほど見ていた、白樺が立ち並ぶ小路を

そっと歩き始めた………





ここでは

あまり、人と出逢わない






木漏れ日が揺れる、路を………

気持ちよく歩いて、ほどなく

開けた広場に出る





何も、ない






ただ、ベンチが数個あって

広場には、野花が揺れている






ベンチの1つに腰を下ろし

野花を眺めて、空を仰ぐ





















ふ〜







気持ち、いい







ここは、ホント、好き







のどかで、静かな………その空間で

色を目に焼き付け

スマホで写真を撮ったり

草花の名前を調べたり………






そのうちに………ぶるる

陽が暮れ始め、寒くなってきた






もときた、路を………

少し足早に、戻る






玄関を、開け………

家の電気を付け、自分の部屋に入ろうとすると







そこは………見た事もない部屋だった

私の部屋じゃない







どう言う、こと????







机の上には

山ほどの、色とりどりな、糸

刺し掛けの、大きな刺繍

他にも、壁には立派な額に入った

刺繍がいくつも飾られていた






えっ、ここは、なんなの?







何年か前の

ある7月のこと

わたしは、たしかにその時に

そんな夢を見たのだ







わたしの、刺繍への扉が

そこに………あったのかも知れないな………