『蔓延元年のエレキギター』


6.受験生のレコードの聞き方

前回書いた、ステレオなんか見だごどねぇ、というのはホントですよ。当時、クラスメートが持っていたのはほとんどがモノラルの蓄音機だった。

ん?さすがに蓄音機というコトバは古いか。プレイヤーというコトバがそろそろ使われ始めてましたね。蓄音機はプレスリー前期までのコトバだった。



僕らが持っていたプレイヤーは上の写真よりももっと安っぽかったし小さかった。思えば悲しい青春時代であった。


僕らが聞いたレコードは大半がモノラルです。何故って、ステレオ録音が始まったのは意外に新しい、1962年です。僕が中学生のころだ。ジャズ界の大物サッチモやクラシックのレコードが最初だったらしい。僕は左の耳があまり聞こえないから今でもモノラル状態。青春前期だ。おかげで若い。


当時のレコードにはドーナツ盤という美味そうな名前がついていた。このドーナツ盤をプレイヤーのお皿に載せ、コーヒーか紅茶で食べる。すると歯のあいだからメロディーが聞こえてくる。というのはもちろん冗談。


当時の受験生はどうやってストーンズやビートルズを聞いたか。


まずプレイヤーのボリュームをギュッと絞ります。そして寝っころがってモノラルのスピーカーに右か左の耳を寄せる。これが当時の受験生の夜の正式な聞き方だった。もちろん親に勉強していると思ってもらうため、親孝行のためです。


このモノラルのプレイヤー。ほんとに吹けば飛ぶようなチャチなプラスチックの道具で、近くであんまり激しく踊ると針が飛んでしまう。上ブタと本体なんかすぐ離婚です、いや家庭内別居です。[続く]