『ペデカーのように僕の放浪の魂は彷徨った』
3.ドロップアウト
私は大学の入学試験をバリケード封鎖された校舎の中で受けた。バリケードを解いて作られた入り口を警官が警護している。物々しい雰囲気だった。
入学してすぐに学部集会があった。顔を出してみると雛壇にワイシャツの袖を捲くった議長の大口昭彦がいて演説が始まる。それから10分足らずで学部ストが議決された。けっきょく全学ストで6月まで講義はなかった。
私は全共闘運動にはまったく興味がなかった。高校の先輩が一緒にデモに出ようと誘いに来たが、話を聞いてみると彼はちゃっかり教職をとっている。卒業したら公務員になる腹積もりのようだ。なにか違和感があった。というか、私の心は彼を軽蔑していた。
あの時代、学生運動に身を投じた学生が多かったかといえば決してそうではない。初めてのクラス会に出席した約50人の学友のうち、ドロップアウトしたのは昨日の記事で書いた小笠原の彼と私の2人だけだ。
不思議なことだが、私は子供のときからなにかに成りたいと思ったことがない。ましてやサラリーマンになるなんて、考えただけで嫌で嫌でしょうがない。だから授業には出席せず、小説を読んだり映画を見たりで学生の身分を消費していた。
よく通った映画館のひとつ。
駅と大学の中間あたりにある。
私がここを越えて大学まで行くことは稀だった。