ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』

その18『指』


写真・文by ロンジ (クリック)


ああ 私の愛しいひと
あなたは私の口に糊するために惜しみなく働いて
鍵盤を叩かなくてならない指を
傷だらけの黒い手に変えてしまう

ああ かわいそうなあなた
私はその汚れたツメの周りを取り囲むささくれを
そっと含んで噛み切るのだけれど
疲れたあなたは私の軀から漂うあたらしい香水と
誰かの香りに気付くことはない


『指』文by 70rock

君をまさぐりながらまどろめば
ほのかな海の匂いがする

膝のあいだから
潮の香りが立ちのぼる


人の世は叙情詩の汚(けが)れ
生きること
そして芸術なんて
なんという徒労だろう


ただ
この指が どうしても
君を忘れられなくて


冷やし蜥蜴寫眞館 (クリック)のロンジさんと
私70rockとのコラボレーション
ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』の第18回です。


日曜の夜にロンジさんの写真と文章をアップ。

その写真と文章に触発されて私の灰色の脳細胞に生れた言葉を書きつけ

1枚の写真と2つの文章を次の日曜にアップします。



その1『指輪』その2『紫陽花』その3『装置』その4『Nine Lives』その5『残暑』

その6『横浜ベイサイド』その7『一人と二人の夜のものがたり』その8『官能』

その9『板チョコと廃工場』その10『かきのきのさか』その11『舞台』その12『水辺』

その13『まちぼうけ』その14『土蔵』その15『凍る夜』その16『渇望』その17『回廊』