ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』

その17『回廊』


写真・文by ロンジ (クリック)

橙色の灯りがともった寂しい回廊を柱時計がボン、ボンと鳴り響き
私はフランネルの寝間着に裸足のままで
古い額縁の前に立ちました
そこにはヒビ割れた絵の具で描かれた先々代が
硝子のように透明で無関心な瞳を此方に向けているのです
彼こそ私と気付くまで
二万回ほどの夜が漠々と流れてゆきました


『回廊』文by 70rock

夜のニンフェンブルク城。
夢の回廊での再会。

これが最後の夜をもう一度。


ああ去年マリエンバートで・・・・

わたしたちはなにをしたのか。
しなかったのか。


時の記憶が

わたしたちを呑み込むまえに
千と一夜の物語が

語り終えられるまえに

わたしがあなたにしてあげたかったこと
してあげられなかったことを
語り尽くしたい。

これが最後の夜の記憶に。



冷やし蜥蜴寫眞館  (クリック)のロンジさんと 
私70rockとのコラボレーション
ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』の第17回です。


日曜の夜にロンジさんの写真と文章をアップ。

その写真と文章に触発されて私の灰色の脳細胞に生れた言葉を書きつけ

1枚の写真と2つの文章を次の日曜にアップします。



その1『指輪』その2『紫陽花』その3『装置』その4『Nine Lives』その5『残暑』

その6『横浜ベイサイド』その7『一人と二人の夜のものがたり』その8『官能』

その9『板チョコと廃工場』その10『かきのきのさか』その11『舞台』その12『水辺』

その13『まちぼうけ』その14『土蔵』その15『凍る夜』その16『渇望』