冷やし蜥蜴寫眞館-吐息

ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』

その15『凍る夜』



写真・文by ロンジ (クリック)

言葉も白い吐息とともに凍る夜
消耗したあなたの目が深い隈で縁取られ
唇が乾涸らびた大地のようにひび割れる
あなたの明日が叢に吸い込まれていくのを
私と月明かりが見守っています
愛しいあなたが飢えた野良猫に喰われたりしないように

そんな私にそっと
男が徽章の付いた高価な外套をかけてくれました
あなたに、ではなく

『凍る夜』文by 70rock


青い透明なレインコートだけを着た女が
しゃがんでメールを打っている
公園の花壇には白い花が群がり咲いている

女の背後を横切る野良猫の目に
黄色い細い三日月が2つ
僕の視線は黒い叢の奥に吸い込まれてゆく

やがて月明かりも街灯の明かりも消えて
僕も女も家に帰る
明日を知らない今日が始まる

冷やし蜥蜴寫眞館 (クリック)のロンジさんと
私70rockとのコラボレーション
ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』の第15回です。


日曜の夜にロンジさんの写真と文章をアップ。

その写真と文章に触発されて私の灰色の脳細胞に生れた言葉を書きつけ

1枚の写真と2つの文章を次の日曜にアップします。



その1『指輪』その2『紫陽花』その3『装置』その4『Nine Lives』その5『残暑』

その6『横浜ベイサイド』その7『一人と二人の夜のものがたり』その8『官能』

その9『板チョコと廃工場』その10『かきのきのさか』その11『舞台』その12『水辺』

その13『まちぼうけ』その14『土蔵』