6.悪友Oとの歴史的会話


翌朝登校した私はさっそく級友のOをつかまえ、かまやつアニキがしでかした事件の話で大いに盛りあがった。

Oは後年、皆さんもよくご存じの少年マンガ誌の編集長になった。彼が編集長に就任早々に決断したある出来事は新聞にも大きく取り上げられた。映画についての本も出している(注)



さて。問題の事件の翌朝。教室でのワタシたちの押し殺した会話:

O「見たかよ? 昨日のスパイダースってバンド。首の後ろにエレキギターを回したシーン。ビックリしたぜ」

私「見たよぉ。かまやつひろしだろ。どっこい生きていた、だなぁ」
O「4人目のひろしに成り損ねてだよ、クスブッテタかまやつがドラキュラのごとく復活だ。世の中ワカランな」
私「ホント、ワカランことだらけだな。生きにくい世の中になったもんだ」

O「ワカランのは物理だけでタクサンだぜ。なぁ」


3人ひろしというのは、水原ひろし、守屋浩、井上ひろし。1959年から60年頃にかけて相次いでロカビリーから歌謡曲に転進し、大ヒットを飛ばして一世を風靡した。


守屋浩は浜口庫之助の『僕は泣いちっち」。水原弘は永六輔作詩、中村八大作曲の『黒い花びら』で鮮烈なデビューを飾り、井上ひろしはリバイバル曲の『雨に咲く花』をヒットさせた。


ひとりだけヒット曲がなかったのがムッシュだ。「みんな華々しくデビューしたのに、俺ひとり蚊帳の外でした。ひろしです」と言ってたかどうか、今となっては確認のしようがありません。



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注: Oが出した本についての記事は『任侠映画がお嫌いな公園』の第7話「マカロニ・ウェスタン」の中にあります。

http://ameblo.jp/70rock/theme-10026102863.html