注:フィン・アンドリュースはsunburnの2年来のメル友です。


『民主主義なんてアホどものためのもの』

まさにザ・ベイルズにどんぴしゃりの言葉だ。

フロントマンのフィン・アンドリュースはかつてXTCのメンバーだったバリー・アンドリュースの息子だ。ただし、だからと言って彼の音楽が父親に似ているとか、彼が音楽業界に足を踏み入れるのに父親の保護が役に立ったというわけではない。

それは事実だ。ヴェイルズは2004年の初め頃にデビュー・アルバム「The Runaway Found」をRough Tradeからリリースしたが、そこに漕ぎつけるまでの苦闘といったら並大抵のものじゃなかった。

若干20才のフロントマン、フィンはわざわざ時間を取って今回のインタビューに応じてくれた。アルバムがやっとリリースされて、今どんな気持ちでいるか。どうしてMuseやColdplayのようなバンドと同じカテゴリーに入れられるのが嫌なのか。彼の言葉を聞いてみよう。


●2003年も末だね。さぁ、今ヴェイルズの中にいるってのはどんな感じがする?

フィン「3年も塩ばかり食わされた末にやっとストロベリーを口に入れることができたって感じかな。とてもエキサイティングだよ」

●君は最初のレコードの契約ではちょっとアンラッキーだった。おかげでアルバムのリリースがかなり遅れたよね。結局のところ、どっちが大きかったと思う? つまり、2年もの努力と準備にふさわしいものを出さなきゃっていうプレッシャーと、やっとアルバムがリリースできたっていう解放感とでは。

フィン「僕はアルバムを心底から出したかった。だから本当の意味でプレッシャーなんかなかったね。何かいいものを出したいって気持ちのほうが大きかったよ。2年間がそれほど長かったとは思わない。もし必要なら、あと5年ほど費やしてもよかったとさえ思ってる」

●そうだろうね。アルバムを急かされなかったことは逆に有利な点もあったかもね。でもさ。このアルバムをもし2~3年前に出せてたらと考えたとき、何が惜しかったと思う?

フィン「何もないね。このアルバムを出すまでにかかった時間。それとはまた別の感じがするんだろうなって思うだけさ。それはそれでいいんじゃないかな」






●このアルバムでは複数のプロデューサー(Bernard ButlerやKenny Jones)と仕事をしたよね。君の音楽に何をもたらしてほしかった?それで彼らは君の期待に応えたかい?

フィン「なかなかの仕事をしてくれたと思うよ。彼らのアイデアが特に気に入ったわけじゃないけどね。僕らはスタジオにまだ馴れてないだろ。だから新鮮で良い耳になってくれる他人が必要だったんだ」

●君にとって外部からの意見はどれだけ重要なんだい?なにしろ君のファースト・アルバムだしね。君は今でも色んなことを学ばなきゃならないルーキーみたいに自分を感じてる? たとえば"妥協する"ことが難しいって感じることがあるかい?

フィン「最初に音楽業界に近づいたときに一番に恐れてたことは、みんなは僕にどれだけ妥協を求めてくるんだろう、っていう事だった。契約にサインしたとき、僕は17才になったばかりだったしね。だから音楽業界にいる金持ちのヤッピーのファシストどもに、クソったれ、僕をほっといてくれ、なんて言える自信はまだなかった」

●僕がアルバムを聞いた印象だと、かなり雄大で叙事詩みたいな歌が沢山あるよね。作られ過ぎの感じがしなかった。この歌を書いたとき、君の頭のなかにはこんな風に聞こえてたの?さもなきゃ、アレンジはどんな風にして頭に浮かんだんだい?

フィン「さぁね。ただ、あんな風に浮かんできたんだ」

●LK - 自分が止まらなきゃならないポイント。これで歌はできたって思えるポイントを決めるのは簡単?それとも、時には遠くまで行き過ぎてしまう?

フィン「1つのトラックに2日以上の時間をかけたことはなかったよ。どんな歌であれ、ただ必要な時間を使っただけさ。リハーサルなんかには何ヶ月もかけてる。でも曲作りを何時やめればいいか。それを知る方法があるのかどうか僕には分からないな。ただ、誰かがベースのソロをどうとかなんて案を出す時があるだろ? そんな時は仕事を切り上げるいいタイミングみたいだな」





●アルバムの曲はかなり多様性があるね。君の声は別にしても。このア ルバムを纏めてるものは何だと思う?レコードを貫いている赤い糸は何かな

フィン「歌は全部、同じ3人の人間に関するものさ。だからアルバムを統 一してる何かはあると思うよ。このレコードには、死や愛、光や炎が溢 れてるだろ。歌はすべて、これらの要素を中に持ってるんだ」

●The Veils はどれくらい民主的なグループなの?

フィン「民主主義? そんなのアホのためのものさ。長持ちするのは闘う 独裁者だよ」

●新しいバンドはなんにしろ、ほかのバンドと比べられるもんだよね。 そして大半はそれを嫌がってる。でも、比較されてみて、かなり当たっ てるなと思えるバンドはあるかい?それと、最もかけ離れてると思うバンドは?

フィン「オランダの批評家が、僕の声はEartha Kittと真空掃除機を混ぜ 合わせたみたいだと言ってるけど、かなり当たってるんじゃないかな。 ここ10年のバンドと僕たちを比べられたら、ちょっと腹が立つね。1992 年以前のバンドと比べるのが、まあ妥当なとこだと思うよ」

●僕ら外側にいる者の目から見ると、レーベルとしてラフ・トレードを 選んだのは最近じゃすごくいい選択だと思うよ。これについてはずいぶ ん考えたの?それともGeoff Travis との関係から、これは多かれ少なか れ当たり前というか、避けられない選択だった?(ジェフ・トラヴィスは ヴェイルズがBlanco Y Negroと契約を結ぶのを助けたことがある。そっ ちは不運な結末に終わったが)

フィン「図星だね。まさにジェフだからさ。それとJeannette Lee。僕た ちは彼らの近くにいたかった。ほんとに最初から彼らは僕たちと一緒に いてくれたしね。この道を行くのが一番いいって感じたんだ」

●何か有名な言葉をひとつどうだい? 締めくくりに。

フィン「"それについて話すことができないなら、それを指させ"かな」 (Laurie Anderson)



翻訳sunburn